ベートーヴェンの濃密な音世界
どんな人の心にも届くパフォーマンスが可能なピアニスト、白石光隆。ピアノ作品の大曲のみならず、小粋な小品から、知られざる名曲、そしてジャズまでを自在に弾き熟す白石が、今年9月のリサイタルではベートーヴェンの最後の3つのソナタ、第30番〜第32番に真っ向から対峙する。10年振りの特別プログラムだ。白石は過去にリリースされた2枚のベートーヴェンのソナタ・アルバムを通じて、作曲家のエネルギー溢れるソナタをダイナミックに、かつ洗練された響きで提示した。ベートーヴェンにとってピアノ・ソナタは、当時日々改良が重ねられていたピアノという楽器に、自らの内面に広がる濃密な音世界を託すようにして書き綴った非常に重要なジャンル。聴覚を失った晩年、凝縮されたソナタ形式や変奏曲形式を通じて、ベートーヴェンは何を伝えようとしたのか。白石の淀みないテクニックと幅広い見識に裏付けられた解釈で、その答えに触れられるだろう。
文:飯田有抄
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年8月号から)
9/9(水)19:00 東京文化会館(小)
問:プロアルテムジケ03-3943-6677
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