ショパン研究所が都内で会見、万博「ショパン・ウィーク」とショパンコンクール開催をPR!

 ポーランド国立フリデリク・ショパン研究所(NIFC)のアルトゥル・シュクレネル所長はじめスタッフが来日し、都内のポーランド大使館で記者会見が開催された。8月28日〜9月3日に予定されている大阪・関西万博におけるポーランドパビリオンのイベント「ショパン・ウィーク」について、そしていよいよ開幕までひと月余りに迫った第19回ショパン国際ピアノコンクールについて、日本のメディアに向けて改めて説明が行われた。

左:アルトゥル・シュクレネル所長 右:アデリナ・クモル広報宣伝部長

多彩なイベントが用意された「ショパン・ウィーク」

 4月の万博開幕以来、ポーランドパビリオンでは実に360回を超えるコンサートが行われてきたというが、特に8月28日からの7日間には、「ショパン・ウィーク」と題したスペシャルイベントを開催する。これは10月のショパンコンクールのプロモーションを兼ねた催しで、各種音楽イベントや映画の上映、カリグラフィーのワークショップなどが予定されている。同国のソプラノ歌手、アルドナ・バルトニクとフォルテピアノ奏者、川口成彦による珍しいショパンの歌曲をあつめたリサイタルのほか、10月のショパンコンクールに出場予定の中島結里愛・京増修史・東海林茉奈のリサイタルが聴けるのは、ピアノファンにとっては嬉しいところ。ハイライトとなるのは過去の入賞者たちが出演する公演。EXPOホール「シャインハット」では、クシシュトフ・ヤブウォンスキと小林愛実がワルシャワ・フィルと共演する。

NIFC Press Conference

 さらに興味深いのが、ショパンの自筆譜(ポーランド国歌の旋律に和声づけをしたもの)や自筆の手紙(いわゆる「シャファルニア通信」と呼ばれるもの)原本の展示。日本はもとより、国外に持ち出されることが初という貴重な資料で、手紙をめぐる関口時正氏による講演とあわせて、多角的にショパン像に触れることができる。

ファイナルの「幻想ポロネーズ」は協奏曲の前のプレリュード

 10月2日にオープニングを迎えるショパンコンクール。過去最多となる642名の応募者の中から、春の予備予選通過者と予選免除者を合わせた計85名の出場が予定されている。日本勢は13名。国別で最多となる中国勢29名に次ぐ数を誇る。

 今大会の大きなトピックとして、ファイナルの課題にソロ曲(「幻想ポロネーズ Polonaise-fantaisie」)の演奏が導入されたことが注目されている。シュクレネル所長がその意図と、具体的な演奏の段取りを明かした。
「作曲家若き日の作品であるピアノ協奏曲だけを課すのではなくて、最も晩年に書かれた作品のひとつである『幻想ポロネーズ』を同時に弾いてもらうことで、(出場者に)作曲家のあらゆる資質を把握していただきたい。そういったコンセプトで追加の1曲を課題に入れることになりました」

 さらに、もうひとつの要素として、“ファンタジー”という様式のもつ性質を挙げた。
「この曲はファンタジー、つまり即興の要素が非常に強いジャンル。ショパン自身もインプロヴィゼーションを行いましたが、コンチェルトを弾く前に自分自身もインプロヴィゼーションや自作の別のソロの作品を弾く、そしてその後でコンチェルトの演奏に入っていくという演奏スタイルをとっていました。19世紀には当たり前だったことですが、そういった形を今回もとってみたいということから、まずはポロネーズを演奏してもらいます。その後、舞台の転換などはありますが、一つのつながりの中で協奏曲の演奏をしていただくことになります」

 つまり「幻想ポロネーズ」は協奏曲の前のプレリュードの役割を果たすことになる。実際の段取りとしては、「おそらくオーケストラのメンバーは『幻想ポロネーズ』の演奏のあいだ、舞台上で待機した状態で、そのまま協奏曲の演奏へと移ることになるだろう」とシュクレネル所長は語った。

 また、今大会、ベヒシュタインが半世紀ぶりにコンクールにカムバックし、ピアノメーカーはスタインウェイ、ヤマハ、カワイ、ファツィオリ、ベヒシュタインの五社となる。従来は、スタインウェイが2台用意されていたが、今回はメーカーごとに各1台。コンテスタントは計5台の中から選ぶことになる。「原則として、一度選んだピアノは、本選まで変えられない」とのNIFCの回答だったが、前回大会の折にも、結果的にはそのルールが反故にされ、途中段階での選択変更が認められたという経緯があり、このあたりは開幕後の動向を注視していく必要がありそうだ。

 コンクールの模様は公式ウェブサイトやスマホアプリ、NIFCのYouTube公式チャンネルなどに加え、初めてTikTokでも配信される。若年層へ裾野を拡げるという意図があるという。ピアノファンにとっては、寝不足の日々が続く10月となるが、コンクール終了後、早くも12月には日本でも優勝者リサイタル(12/15,12/16)が行われ、翌1月には入賞者ガラ・コンサート(2026.1/27, 1/28)も予定されている。同月には入賞者とワルシャワ・フィルとの全国ツアー全8公演もあり、現地の熱気を時間を置かず体感できる貴重な機会となる。

【Information】
第19回ショパン国際ピアノコンクール
10/2(木) オープニングコンサート
10/3(金)〜10/7(火) 1次予選(85名)
10/9(木)〜10/12(日) 2次予選(約40名)
10/14(火)〜10/16(木) 3次予選(約20名)
10/17(金) フリデリク・ショパン没後176年記念コンサート
10/18(土)〜10/20(月) ファイナル
10/21(火)〜10/23(木) 入賞者コンサート
https://chopincompetition.pl/en

第19回 ショパン国際ピアノ・コンクール2025 ―日本公演―
https://chopin.japanarts.jp


【Information】
第19回ショパン国際ピアノ・コンクール2025 優勝者リサイタル
2025.12/15(月)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
2025.12/16(火)19:00 東京芸術劇場 コンサートホール

第19回ショパン国際ピアノ・コンクール 2025 入賞者ガラ・コンサート
2026.1/27(火)、1/28(水)18:00 東京芸術劇場 コンサートホール
2026.1/31(土)13:30 愛知県芸術劇場 コンサートホール

出演
第19回ショパン国際ピアノ・コンクール入賞者(複数名)、アンドレイ・ボレイコ(指揮)、ワルシャワ国立フィルハーモニー管弦楽団

他公演
2026.1/22(木) 熊本県立劇場 コンサートホール(096-363-2233)
2026.1/23(金) 福岡シンフォニーホール(092-725-9112)
2026.1/24(土)大阪/ザ・シンフォニーホール(ABCチケットインフォメーション06-6453-6000)
2026.1/25(日) 京都コンサートホール(ABCチケットインフォメーション06-6453-6000)
2026.1/29(木) ミューザ川崎シンフォニーホール(神奈川芸術協会045-453-5080)