
右:トマス・ハンプソン ©Jimmy Donelan
世界的に活躍する若手指揮者の起用に積極的なNHK交響楽団の定期公演に、5月のギエドレ・シュレキーテ、6月のタルモ・ペルトコスキに続いて、9月、アメリカ出身のライアン・バンクロフトが登場する。
バンクロフトは、1989年、カリフォルニア生まれ。カリフォルニア芸術大学でトランペットを専攻した後、スコットランド王立音楽院で指揮を学ぶ。2018年のニコライ・マルコ国際指揮者コンクールで優勝し、現在はロイヤル・ストックホルム・フィルとBBCウェールズ・ナショナル管弦楽団の首席指揮者を兼務している。
今回、N響では、シベリウスの交響詩「4つの伝説」を取り上げる。有名な〈トゥオネラの白鳥〉のほか、〈レンミンカイネンと島の乙女たち〉、〈トゥオネラのレンミンカイネン〉、〈レンミンカイネンの帰郷〉の計4曲は、「レンミンカイネン組曲」とも呼ばれ、民族色の感じられるシベリウス初期の作品を、若きマエストロが多彩に描くことだろう。また、晩年のバーンスタインに才能を認められ、巨匠とマーラーの「さすらう若人の歌」や「リュッケルトの詩による5つの歌曲」などの録音を残すレジェンド、トマス・ハンプソンが久々にN響定期に登場し、十八番といえるマーラーの歌曲を歌う。今回は歌曲集「こどもの不思議な角笛」から5曲。交響曲第2番「復活」の第4楽章に転用された〈原光〉や交響曲第4番の第4楽章となった〈天上の生活〉を名バリトンがどう聴かせてくれるのか、興味津々である。
文:山田治生
(ぶらあぼ2025年9月号より)
ライアン・バンクロフト(指揮) NHK交響楽団
第2044回 定期公演 Cプログラム
2025.9/26(金)19:00、9/27(土)14:00 NHKホール
問:N響ガイド0570-02-9502
https://www.nhkso.or.jp

山田治生 Haruo Yamada
音楽評論家。1964年、京都市生まれ。1987年慶應義塾大学経済学部卒業。雑誌や演奏会のプログラム冊子に寄稿。著書に「トスカニーニ」、小澤征爾の評伝である「音楽の旅人」、「いまどきのクラシック音楽の愉しみ方 」、編著書に「戦後のオペラ」、「バロック・オペラ」、「オペラガイド」、訳書に「レナード・バーンスタイン ザ・ラスト・ロング・インタビュー」などがある。


