【CD】かつて夜の灰色から浮かび出て/黒岩航紀&伊藤万桜&陬波花梨

 矢澤孝樹氏のライナーノーツの言葉を借りれば「出自も異なれば発音原理も異なる3つの楽器が奏でる未知の響き」に魅せられるアルバム。この異色トリオのために、ミヨーとラヴェルの作品はそれぞれクラリネットとチェロをサクソフォンに置き換え、ドビュッシー「夢想」はピアノ&ヴァイオリン&チェロのための編曲版の別編成だが、芸達者な3人が織りなす色鮮やかな新世界に心を掴まれる。もちろん、新印象主義派なドフォンテーヌが2000年に書いた「夢の色彩」と、クレーの絵画にインスパイアされた久保哲朗による委嘱新作(本盤タイトル曲)の2つのオリジナル作品が圧巻だ。
文:東端哲也
(ぶらあぼ2025年9月号より)

【information】
CD『かつて夜の灰色から浮かび出て/黒岩航紀&伊藤万桜&陬波花梨』

ドビュッシー:夢想/ミヨー:組曲 op.157b/ジャン=リュク・ドフォンテーヌ:夢の色彩/久保哲朗:かつて夜の灰色から浮かび出て/ラヴェル:ピアノ三重奏曲

黒岩航紀(ピアノ) 伊藤万桜(ヴァイオリン) 陬波花梨(サクソフォン)

N&F
MF29801 ¥3300(税込)