後期3大ソナタの深遠なる世界へ
この7月の「八ヶ岳高原サロンコンサート」に田部京子が出演する。国内外で多数のリサイタルや主要オーケストラとの共演を行い、常に高い評価を受けてきたピアニストだ。ドイツ・ロマン派の作曲家の作品を得意とする彼女は、ベートーヴェンとブラームスの作品を集めた全5回のシリーズ『BBワークス』を今年中に完結させるなど、その演奏はますます円熟味が増している。プログラムは、ベートーヴェンの作品の中で、書法はもちろん、内容面においても最も充実した3つの最後のソナタ。田部はこれらの作品について「畏敬の念を抱かずにはいられない荘厳な構築物」と述べており、実際にフーガが作品内で大きな役割を果たすこの3曲は構成力が非常に重要となる。彼女の一つひとつが磨き抜かれたように輝く音色、耳を極限まで澄ませることでようやく得られる、旋律の終わりまで丁寧に歌いあげるフレージングが音楽を繊細に織り上げ、作品の美質を極上の形で披露してくれるだろう。
文:長井進之介
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年6月号から)
7/11(土)17:30 八ヶ岳高原音楽堂
問:八ヶ岳高原ロッジ0267-98-2131
http://www.yatsugatake.co.jp