トゥルク・フィルの首席奏者を務めるなど、フィンランドを中心に活躍するオーボエ奏者、髙島拓哉のソロ・デビュー盤はフランス作品集。一曲目のラヴェルの「ソナチネ」(オーボエとピアノ版)を聴くと、その細やかに伸び縮みし、滑らかに楽器を歌わせる手腕に引き込まれる。そして、透き通った響きのなかで、さまざまに表情を移ろわせるプーランクのオーボエ・ソナタ。望月晶のピアノも繊細な表現でオーボエに呼応する。メシアンの「ヴォカリーズ・エチュード」での、優しく包み込むようなオーボエの旋律と色彩さざめくピアノによる浮遊感あふれる演奏が印象的だ。
文:鈴木淳史
(ぶらあぼ2025年8月号より)
【information】
SACD『Résonance/髙島拓哉&望月晶』
ラヴェル:ソナチネ(ダヴィッド・ヴァルター編)、ヴォカリーズ ハバネラ形式のエチュード/サン=サーンス:オーボエ・ソナタ/フォーレ:小品/プーランク:オーボエ・ソナタ/メシアン:ヴォカリーズ・エチュード/デュティユー:オーボエ・ソナタ
髙島拓哉(オーボエ)
望月晶(ピアノ)
オクタヴィア・レコード
OVCC-00181 ¥3850(税込)

鈴木淳史 Atsufumi Suzuki
雑文家/音楽批評。1970年山形県寒河江市生まれ。著書に『クラシック悪魔の辞典』『背徳のクラシック・ガイド』『愛と幻想のクラシック』『占いの力』(以上、洋泉社) 『「電車男」は誰なのか』(中央公論新社)『チラシで楽しむクラシック』(双葉社)『クラシックは斜めに聴け!』(青弓社)ほか。共著に『村上春樹の100曲』(立東舎)などがある。
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