テーマは「海」と「時空のコントラスト」
第2シーズンに入ったジョナサン・ノット&東響。抜群の統率力を誇る指揮者と端正なアンサンブルが持ち味のオーケストラのコンビだが、予定調和をあえて崩すノットの変化球も飛び出したようで、目が離せない。7月の2プログラムも知性派指揮者らしい考え抜かれたもの。そこに込められた意図を確認しよう。
11日の東京オペラシティシリーズは「海」がテーマ。まずは欧州で躍進を続ける細川俊夫の近作「循環する海」。どっしりとした持続の中で海が様々な表情を見せる。続いて萩原麻未の独奏でラヴェル「左手のためのピアノ協奏曲」。ジャジーでリズミカルな箇所も印象的だが、作品全体に立ち込める底知れぬ暗さはどこか深海を思わせるだろう。そしてドビュッシー「管弦楽のための映像」。こちらは打って変わって、南欧の輝かしい太陽を反射する海の姿が描き出される。
16日と18日のプログラムでは、近現代とベートーヴェンが鋭く対峙する。ストラヴィンスキー「管楽器のための交響曲」は、この作曲家の新古典期の作風を表すシニカルで乾いたサウンドが特徴的だ。厳しく、また力強いバルトークの「ピアノ協奏曲第1番」は、落ち着いた佇まいとノーブルなアプローチで聴き手を魅了するデジュー・ラーンキのソロで。これにベートーヴェンの「運命」交響曲が続く。現代音楽の扉を開いた前半の作曲家たちと対比させることで、クラシックの代名詞のようなこの曲の“危険さ”が伝わってくるのではないか。伝統を伝統として受け止めるのでなく、それが当初持っていた起爆力とラディカルさを再発見したい。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年7月号から)
第87回 東京オペラシティシリーズ
7/11(土)14:00 東京オペラシティ コンサートホール
第632回 定期演奏会
7/16(木)19:00 サントリーホール
第51回 川崎定期演奏会
7/18(土)17:00 ミューザ川崎シンフォニーホール
問:TOKYO SYMPHONY チケットセンター044-520-1511
http://tokyosymphony.jp