野平一郎プロデュース、「フェスティヴァル・ランタンポレル」が今年も開催!~東京文化会館 2025年度主催事業 ラインアップ記者発表

 3月14日、東京文化会館の2025年度主催事業ラインナップに関する記者発表会が行われ、作曲家・ピアニストで同館音楽監督を務める野平一郎らが登壇した。

左より:大橋昭則(営業推進担当課長) 野平一郎(音楽監督) 戸谷嘉孝(副館長) 梶奈生子(事業企画課長)

 2026年5月から大規模改修に伴う長期休館に入る東京文化会館。その直前となるシーズンの主催事業の大きな軸となるのが、11月13日から11月17日にかけて開催される「フェスティヴァル・ランタンポレル(仏語で“時代を超えた”の意)。昨年、野平のプロデュースのもと「現代と古典の音楽がクロスオーバーする」をコンセプトにスタートした。2年目となる2025年度も、前回の枠組みを引継ぎつつプログラムを展開する。連携するレ・ヴォルク音楽祭(フランス・ニーム)の創始者で芸術監督を務めるキャロル・ロト=ドファン(ヴィオラ)が、東京文化会館チェンバーオーケストラのメンバーと共演(11/16)。さらに、昨年日本デビュー20周年を迎えた実力派ピアニスト、福間洸太朗がリサイタルを開く(11/17)。両公演とも、モーツァルトとジョージ・ベンジャミンをテーマとした唯一無二のプログラムを予定。また、生誕100年で注目を集めるブーレーズが創設したIRCAM(フランス国立音響音楽研究所、パリ)との連携公演『チャップリン・ファクトリー』では、「喜劇王」チャーリー・チャップリンによる3作の無声映画に、現代作曲家マルティン・マタロンによる音楽が付される(11/14)。

野平「初回がうまくいくか……というのは試金石となると考えていましたが、ずいぶん多くのお客様に来ていただけました。特に、視覚芸術への挑戦となった『IRCAMシネマ』では、東京文化会館の演奏会によく足を運んでくださる聴衆とはまた違った層の方々にもお集まりいただくことができたと思っています。
 今回フォーカスするベンジャミンは、かつて“天才少年”として知られていた人です。そんな彼にとって一番尊敬する作曲家がモーツァルト……ということで、この二人の組み合わせはすでにレ・ヴォルク音楽祭でも取り上げられていて、日本でもぜひやってみたいと。IRCAMとの連携では、昨年は無声映画と電子音響だけだったのですが、今回はフランスからアコーディオンとパーカッションの三重奏団『Trio K/D/M(トリオ・カデム)』をお招きし、日本の音楽家と共演していただく予定です」

 小ホールで開催される「プラチナ・シリーズ」には、「ランタンポレル」の一環として先述のトリオ・カデムが出演する(11/15)他、シュロモ・ミンツ(ヴァイオリン・8/9)、ルチアーノ・ガンチ(テノール・10/15)、小曽根真(ピアノ・26.3/11)らによるコンサートがラインナップ。実験的な舞台芸術作品を発信する「舞台芸術創造事業」では、『チャップリン・ファクトリー』に加え、岩田達宗が既存の歌曲集を“歌劇化”する好企画の第3弾として『ブラームス マゲローネのロマンス byティーク』を上演(12/20)。モノオペラ化されたブラームス唯一の連作歌曲の世界が、小森輝彦(バリトン/朗読)らによって紡がれる。

 青少年向けの舞台作品を制作する「シアター・デビュー・プログラム」。小学生を対象とした演目では、舞踊 × クラシックで平安文学の世界を描き出し、2022年の初演時には高い評価を得た『虫めづる姫君』が満を持して再演(6/20, 6/21)。さらに中高生向けには、森絵都の短編小説を原作とする舞台作品『彼女のアリア』が新制作される(10/24, 10/25)。根本卓也の作編曲による、J.S.バッハ「ゴルトベルク変奏曲」が散りばめられた音楽に、演劇とダンスがコラボレーションする。

 23回目を迎える若手音楽家の登竜門、「東京音楽コンクール」2025年度は、木管・声楽・ピアノ3部門での開催(第2次予選:8/22~8/24、本選:8/27~8/31)。入賞者は「上野 de クラシック」「東京文化会館オペラBOX」など、同館の主催事業に出演する機会が多数提供される。

 長期的なプロジェクトとして、IRCAMと共同で邦人若手作曲家に委嘱を行う「音楽クリエイター育成プロジェクト Tokyo&Paris to the NEXT」が進行していることも明かされた。向井響(初演予定2026年)、北爪裕道(27年)、横山未央子(28年)の3名がIRCAMへ派遣され、エレクトロニクスを使用した作品を作曲し、パリと日本で発表するという。野平の蒔いた種が着実に実りをつける1年となりそうだ。


東京文化会館
https://www.t-bunka.jp/