『ぶらあぼ』誌面でご好評いただいている海外公演情報を「ぶらあぼONLINE」でもご紹介します。
[以下、ぶらあぼ2025年2月号海外公演情報ページ掲載の情報です]
曽雌裕一 編
↓それぞれの国の情報はこちらから↓
今月は5月の定例音楽祭に加え、マーラーやショスタコーヴィチの特別フェスティバルが行われるため、掲載候補となる月間の公演数が通常の3割増となり、やむなく掲載を取りやめたり、次号に回したものが複数ある。あしからずご了承いただくと同時に、未掲載分はホームページ等でどうか検索をお願いしたい。
さて、その特別フェスティバル。一つはアムステルダムで行われる「マーラー・フェスティバル」。本来、2020年に予定されていたイベントだがコロナのために中止となり、改めて2025年に開催されるもの。ただし、2020年にはウィーン・フィルがバレンボイムの指揮でラインナップされていたが、今回はウィーン・フィルの参加はなく、代わりにルイージ指揮のN響が2公演担当するのが話題となっている。また、コンセルトヘボウ管は前回はチョン・ミョンフン指揮の予定だったが、今回はマケラが2公演を担当。ちなみにN響は、今回の欧州ツアーで「ドレスデン音楽祭」や「プラハの春国際音楽祭」にも招かれている。もう一つの音楽祭はライプツィヒで開催される「ショスタコーヴィチ・フェスティバル」。2025年が没後50年となるショスタコーヴィチのメモリアル・イベント。こちらは、ネルソンスがライプツィヒ・ゲヴァントハウス管とボストン響を振り分けて、八面六臂の大活躍。ネルソンスはこのフェスティバルにとどまらず、ボストン響と共にウィーンやプラハでもショスタコーヴィチの演奏会が予定されている。
以上2つのイベントを除いても、5月は、本文の掲載対象となったものだけで、「ハンブルク国際音楽祭」「ドレスデン音楽祭」「ルール・ピアノ・フェスティバル」「国際ヘンデル音楽祭」「ヴィースバーデン国際五月音楽祭」「シュヴェツィンゲン音楽祭」「プラハの春国際音楽祭」など多くの音楽祭が開かれる。ハンブルクやドレスデン、プラハの音楽祭は、どちらかというとオーケストラや室内楽中心の総合的音楽祭だが、ゲッティンゲンの「国際ヘンデル音楽祭」は完全にヘンデルにシフト。今年は、指揮者のジョルジュ・ペトルーが「ソロモン」や「タメルラーノ」を振るのが楽しみだ。ちなみに「プラハの春国際音楽祭」ではヴァイオリンのコパチンスカヤの公演が大注目。例によってシェーンベルクの「月に憑かれたピエロ」では自ら語り、踊り、歌うに違いない。
音楽祭以外では、話題のワーグナー「リング・ツィクルス」が2つ。ドルトムント劇場のコンヴィチュニー演出のものと、バーゼル歌劇場のベネディクト・フォン・ペーターの演出になるもの。コンヴィチュニーは先頃の二期会「影のない女」の演出で、日本の観客に相当の怒りを起こさせてしまったようだが、ドルトムントの「リング」は、現代の社会的課題をうまく反映させているとの好意的評価も現地ではあるようだ(ドイツのオペラ雑誌等による)。一方のバーゼルの方は、ベネディクト・フォン・ペーターの「光」を意識した色彩的な舞台感覚が話題を呼んでいる。
他には、ウィーン国立歌劇場の「ローエングリン」(ティーレマン指揮)と「タンホイザー」プレミエ、アン・デア・ウィーン劇場の2公演、ヘンゲルブロック指揮のグルック「トーリードのイフィジェニー」(ハンブルク国際音楽祭)、チン・ウンスクの新作オペラ(ハンブルク州立歌劇場・ナガノ指揮)、フランクフルト歌劇場の「パルジファル」、バイエルン州立歌劇場の細川俊夫「松風」、シュヴェツィンゲン音楽祭のスヴォボダ「アダムとイブ」、ジュネーヴ大劇場のペルゴレージ「スターバト・マーテル」、スカラ座の「ヴァイル三部作」、オペラ・コミークのグルック作品(サヴァール指揮)などがオペラの注目公演。ヤーコプス指揮フライブルク・バロック管のヘンデル「タメルラーノ」も面白い。オーケストラでは、ソヒエフ指揮シュターツカペレ・ドレスデンのツアー公演のほか、ケルンWDR響やケルンのフィルハーモニー他で行われる現代音楽の公演も要注目。
(曽雌裕一・そしひろかず)
(コメントできなかった注目公演も多いので本文の◎印をご参照下さい)