2025年4月に創設50周年を迎える東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団は自主運営のオーケストラとして着実に歩みを進めてきた。アニバーサリーを祝う25-26シーズンのプログラムも意欲的なものだが、その少し前、24-25シーズン最後の定期演奏会にはヴェルディの大作「レクイエム」を取り上げる。指揮は常任指揮者である高関健。中江早希(ソプラノ)、加納悦子(メゾソプラノ)、笛田博昭(テノール)、青山貴(バリトン)というソリストは、現在日本で望みうる最高の実力派揃いと言える布陣だろう。
この演目は2021年の定期演奏会にプログラミングされていたものだったが、当時の新型コロナウイルス流行の状況から演奏困難とされ、他の作品に変更されたのだった。それだけに高関にとっても、また合唱で参加する東京シティ・フィル・コーアの面々にとっても、いざ再び、という想いが強いだろう。
さらに新シーズンの定期演奏会(9/6)ではヴェルディのオペラ《ドン・カルロ》の演奏会形式による上演(指揮:高関)が予定されている。《ドン・カルロ》は作曲家中期の最後を飾る傑作(1867年初演)とされるが、1874年に初演された「レクイエム」も、人生最後の時期へと向かう巨匠の心の動き、音楽的な充実ぶりを示すまぎれもなき傑作である。ブルックナー、マーラーの音楽を生き生きと蘇らせる高関のタクトが、ヴェルディではどのようなドラマを作り出すのか。新シーズンへ繋がるコンサートとして、その音楽作りに注目したい。
文:片桐卓也
(ぶらあぼ2025年1月号より)
高関 健(指揮) 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
第377回 定期演奏会
2025.3/8(土)14:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:東京シティ・フィル チケットサービス03-5624-4002
https://www.cityphil.jp