11月21日、滋賀県立芸術劇場 びわ湖ホールが令和7年度(2025年4月〜26年3月)の自主事業ラインナップを発表。同日、ホール内で記者発表会が行われ、芸術監督の阪哲朗、館長の村田和彦らが登壇した。
ポスト就任3年目となる阪が掲げた来年度のテーマは「挑戦」。3年という一つの節目を迎え、今年度のテーマでもある「夢と憧れ」に“挑み”何かを得る、飛躍の年にしたいという意図が込められていると語りつつ、「音楽家に限らず、すべてのアーティストは日々よりよいものを作ろうと“挑戦”を重ねる存在です。昨日より今日、そして明日…と少しでも自分自身をアップデートできれば」と意気込みを見せた。
オペラ公演の自主制作を続けるびわ湖ホールが総力を結集する「プロデュースオペラ」では、粟國淳の演出によるプッチーニ《トゥーランドット》が上演される(26.3/7, 3/8)。キャストの選出にあたっては、同シリーズでは初“挑戦”となる公募オーディションが行われた。指揮を務める阪によると「20代の若手から、本来であればこちらからお願いしないといけないレベルのベテランまで、多くの方に応募いただいた」という。
オペラ鑑賞の裾野を広げることを目的に、2007年3月から始まったシリーズ「オペラへの招待」は注目の2プログラム。レハール《メリー・ウィドウ》(7/18~7/21)では、ウィーンに学び、本場の粋を知り尽くした阪がオペレッタ屈指の名作を花開かせる。モーツァルト《劇場支配人》&レオンカヴァッロ《道化師》は、ドイツ・マグデブルク歌劇場をはじめ、世界の歌劇場でタクトをとったキンボー・イシイが出演(26.1/24~1/27)。オペラのダブルビルは、本シリーズの主要キャストを担うびわ湖ホール声楽アンサンブルにとっては15年ぶりの“挑戦”になるという。
同ホールの創造活動の核として設立され、前述のオペラ公演以外にも学校巡回公演をはじめとする普及事業で大活躍の声楽アンサンブル。第81回定期公演には、阪が21年ぶりに登場、モーツァルトが遺した金字塔「レクイエム」に“挑む”(11/22)。第82回では、1972年に日本人で初めてミラノ・スカラ座で“蝶々さん”を歌った、ソプラノの林康子を監修に迎える。公演に向け約1年間メンバーへの指導が行われ、当日は林によるガイドとともに、各人の特性が活きるようチョイスされたアリアや重唱曲が披露される(26.3/21)。
阪の芸術監督就任とともに名称を改めてリスタートした「びわ湖の春 音楽祭」では、上野通明(チェロ)、ハンスイェルク・シェレンベルガー(オーボエ)をはじめとする実力派に加え、現在開催中の第12回浜松国際ピアノコンクール優勝者の出演も。さらに、阪の指揮のもと、高校生と声楽アンサンブルが共演する新たな取り組みも予定されている(4/26, 4/27)。前芸術監督・沼尻竜典と京都市交響楽団による「マーラー・シリーズ」第6弾は、交響曲第9番。作曲家が最後に完成させた、シンフォニーの歴史において燦然と輝く大作を満を持して取り上げる(11/23)。
リサイタル/室内楽公演に出演するアーティストも充実の顔ぶれ。まず、イザベル・ファウスト(26.1/30)、前橋汀子(10/26)と二人のレジェンド・ヴァイオリニストの登場は見逃せない。日本でも多くのファンから愛されるウィーン少年合唱団(5/10)、世界の檜舞台に立つテノールのルチアーノ・ガンチ(10/13)……と来日勢も豪華。小林愛実(ピアノ、6/7)や石田泰尚率いる「石田組」(弦楽合奏、8/23)ら、人気アーティストの公演も話題を呼びそうだ。
計50事業、163公演を予定、新たなフェーズに進んだびわ湖ホールと阪哲朗の「挑戦」に注目したい。
文:編集部
写真提供: びわ湖ホール