国境を越えて感動を届けるドリーム・オーケストラ
今こそこのオーケストラが必要だろう。世界的指揮者チョン・ミョンフンが主宰するアジア・フィルハーモニー管弦楽団だ。「アジアの演奏家たちが、ひとつのオーケストラの中で調和を図ることで、世界に向けて友好と平和を発信する」との主旨で1997年に創立された同楽団は、2000年代初頭の中断後、06年韓国・仁川(インチョン)市の支援で復活し、シカゴ響、ニューヨーク・フィル等を含む35の楽団から音楽家が集結。以後日本でも公演を行い、中国公演では「韓、中、日が音楽を通じて友達になった。魔術のようだ」と賞賛されている。さらにアジア勢の優秀さは欧米楽団の構成を見ても明らか。それゆえ実力も世界レベルと評され、実際公演を聴いても音楽的水準と完成度の高さに驚嘆させられる。
今年は9月に、ベートーヴェン「三重協奏曲」とドヴォルザーク「交響曲第7番」のプログラムで日本公演を行う。前者では、チョン自らピアノを弾き、台湾出身のシカゴ響のコンサートマスター、ロバート・チェン、別府アルゲリッチ音楽祭出演等でおなじみの韓国のチェリスト、ソン・ヨンフン(ユンソン)と共演。丁々発止か三位一体か? この敏腕3名のソロは実に楽しみだ。ドヴォルザークの7番は、エーテボリ響及びウィーン・フィルとCD録音を行っているチョンの隠れた(?)十八番。重厚さと哀愁を併せ持つ名曲ながら、8、9番に比べて演奏機会が少ないので、これもぜひ生体験したい。
「音楽こそが、国境や理念、宗教や文化の違いを越えて、世界に平和をもたらす唯一の手段である」─緊張関係が強まる今、このチョンの言葉を、熱き名演と共に噛みしめよう。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ + Danza inside 2014年8月号から)
9/4(木)19:00 サントリーホール
問:キョードー東京0570-550-799
他公演
9/3(水) 福岡シンフォニーホール 問:092-725-9112
9/8(月)オーバード・ホール 問:富山市民文化事業団076-445-5610