ソロ奏者として、そして東京佼成ウインドオーケストラのメンバーとしてすでに多くのアルバムを世に送り出している名クラリネット奏者の小倉清澄。独墺系メインストリームの楽曲であるブラームスのクラリネット・ソナタおよびシューマンの幻想小曲集、三つのロマンス待望の新録音だ。いずれの曲においても実に入念かつ繊細なニュアンスが聴かれるが、音楽の流れは決して停滞しないし、一瞬たりとも重苦しくならない。熟達の技としか形容できぬ。小倉の意外とも言える新譜だが、その実力は皆の知るところで、ベテランならではの懐の深い演奏を味わえる。必聴だ。
文:藤原聡
(ぶらあぼ2022年2月号より)
【information】
CD『ブラームス:クラリネット・ソナタ、シューマン: 幻想小曲集ほか/小倉清澄&松下倫士』
ブラームス:クラリネット・ソナタ第1番・第2番/シューマン:幻想小曲集、三つのロマンス
小倉清澄(クラリネット)
松下倫士(ピアノ)
コジマ録音
ALCD-3122 ¥3080(税込)