【CD】無言歌/延原武春&小林道夫

 ドイツ・リートをオーボエで演奏するという奇抜な試み。メインのシューマン「女の愛と生涯」全曲。ライブのステージにはシャミッソーの歌詞の対訳とともに、詩人ゆかりの画家の絵も多数スライドで映し出された。アイデアマン延原武春らしい演出だが、当日会場で見ながら聴きたかった。そう思わせるのは、収録されているトークも軽妙でとても楽しいからだ。シューマンの第2,4,5曲など、旋律が豊かで歌詞がなくても充分に味わえる。シューマン特有の長い間奏や後奏で、ピアノの小林道夫がとても美しい。さすがは稀代の名伴奏者だ。ベートーヴェン、シューベルトでも味わい深い。巨匠のわざを堪能した。
文:横原千史
(ぶらあぼ2021年10月号より)

【information】
CD『無言歌/延原武春&小林道夫』

シューマン:女の愛と生涯/ベートーヴェン:君を愛す、口づけ、蚤の歌、アデライーデ/シューベルト:菩提樹、セレナーデ、アヴェ・マリア/山田耕筰:赤とんぼ、この道、からたちの花/J.S.バッハ:カンタータ第156番より「シンフォニア」

延原武春(オーボエ)
小林道夫(ピアノ)

収録:2021年1月、東京文化会館(小)(ライブ)
ナミ・レコード
WWCC-7952 ¥2750(税込)