山中千尋(ピアノ)

ジャズ・シーンを牽引するピアニストが贈る、刺激的なライブツアー

 デビューから常に第一線で話題作・人気作を発表し続けてきた山中千尋。高校と大学は桐朋学園でクラシックを学んだという経歴もあって、2013年にはクラシックの楽曲と自作を取り上げたアルバム『モルト・カンタービレ』を発表。昨年の『ローザ』でもベートーヴェンの「悲愴」「運命」(特に後者はコロナに翻弄される運命をラテン風に表現した名アレンジ!)を独創的かつ刺激的なアレンジで聴かせる等、クラシックのリスナーにとっても親しみやすいジャズピアニストだ。彼女にとって今年はCDデビューから20周年。各地で記念公演が予定されている。

 「パンデミックによって、20周年をこういう形で迎えるとは夢にも思いませんでした。普段は呼んでいただけたら世界中あちこちで演奏させていただいているんですけれども、それがままならないことに忸怩たる思いもあります。でもそういう時期だからこそ、これまでやってきた曲を大切にしたくて、昔から現在までの曲をライブでは披露したいですね」

 チック・コリア追悼の特別企画の大和公演(10/9)を除き、今回共演するのはいま勢いに乗る30代半ばの山本裕之(ベース/※同姓同名の作曲家とは別人)と橋本現輝(ドラム)だ。

 「山本さんの音が凄く好きなんです。ソロに歌心があって、ピアノと一緒にアンサンブルすると、ひとつの楽器になれるのが素晴らしい。橋本さんには“狂犬”ってあだ名を付けているんです(笑)。静かな部分もあるんですけど、一緒に盛り上がっていこうとするとどこまでもいけるし、次に何がでてくるのか分からない楽しさがあります」

 彼らとの演奏がヒートアップすると、テンポが限界すれすれまで上がっていき、山中がアルバムでは決してみせない、マグマが噴火するような激烈な一面を披露することも。

 「アルバムは繰り返し聴いていただくので、メロディアスでストレートなジャズをやっていこうと思っているんですけど、私自身としてはフリーダムに演奏することが凄く好きなので、ライブでは何が起こるか本当に分かりません! これまで何度となく演奏した曲であっても、私自身は積もりたての雪の上を歩くみたいな、初めて出会った気持ちで演奏に臨んでいますしね。予測不能なジャズの魅力を楽しんでほしいんです」

 今回のツアーのなかで大阪と山形の公演は、通常のドラムセットではなくパーカッションとの共演となり、PA(拡声)も使用しないのがユニークである。他公演ではPAを使用するが、生音の響きを活かせるホールばかりなので、ひりつくようなスリリングな空気感がビンビンに味わえるだろう。
取材・文:小室敬幸
(ぶらあぼ2021年10月号より)

山中千尋トリオ 全国ホールツアー 2021
2021.10/30(土)16:00 大阪/ザ・フェニックスホール
10/31(日)15:00 びわ湖ホール 9/19(日)発売
11/3(水・祝)15:00 山形テルサ
11/6(土)16:00 すみだトリフォニーホール
11/7(日)15:00 東海市芸術劇場
問:プランクトン03-6273-9307 
http://www.plankton.co.jp/chihiro/
※各公演の詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。

山中千尋 プレミアム・ジャズ・ライヴ ~ジャズの巨匠 チック・コリアを偲んで~
2021.10/9(土)16:00 やまと芸術文化ホール(大和市文化創造拠点シリウス内)
問:やまと芸術文化ホール チケットデスク046-263-3806 
https://www.yamato-bunka.jp/hall/