新国立劇場 團伊玖磨《夕鶴》

人の性を鋭く描く、日本を代表する不朽の名作オペラ

2011年公演より 撮影:三枝近志 写真提供:新国立劇場
2011年公演より 撮影:三枝近志 写真提供:新国立劇場
 フォークトによる“白鳥の騎士”で湧いた《ローエングリン》の熱気さめやらぬ新国立劇場2015/16シーズン掉尾を飾る《夕鶴》は、“日本発のオペラ”として海外での上演も珍しくない不朽の名作。こちらは白鳥ならぬ「鶴」が主人公だが、共通するテーマは、誰しもが一度は経験する“過ち”。知ってはならぬことを知ったがために失ってしまう“愛”だ。「鶴女房(鶴の恩返し)」を題材とし木下順二が書いた戯曲『夕鶴』に團伊玖磨が曲をつけた。これまで国内外で800回以上の上演を誇る。なかでも栗山民也の演出による本プロダクションは「コミュニケーションの断絶」という普遍的なテーマに「現代の問題」を重ね合わせた名舞台。このオペラを見終えたとき、美しくも儚い抒情性あふれる音楽が深く心に染み透り、人間にとって何が一番大切なのかを、誰もが自身に問いなおすこととなる。指揮は日本人作曲家の作品に定評ある大友直人。作曲家自身の指揮で歌った澤畑恵美(7/1,7/3)と2011年公演で高い評価を得た腰越満美(7/2)が主人公「つう」役。《沈黙》での迫真の歌と演技で新境地を開いた小原啓楼(7/1,7/3)ほか、盤石の布陣。
文:唯野正彦
(ぶらあぼ + Danza inside 2016年7月号から)

7/1(金)19:00、7/2(土)14:00、7/3(日)14:00 新国立劇場 オペラパレス
問:新国立劇場ボックスオフィス03-5352-9999
http://www.nntt.jac.go.jp/opera