エフゲニー・キーシン(ピアノ)

超自然的な魅力を宿すピアニスト

(C)Sasha Gusov licensed to EMI Classics
(C)Sasha Gusov licensed to EMI Classics

 キーシンのピアノには、どこか不思議な引力がある。完璧なテクニック、内側から湧き出すような音楽の自然さ。果てしない深さときらめきを持つ彼の演奏には、超自然的な魅力が宿っているように思う。しかもそんな天才性の背景には、練習魔で努力家であるという事実がある。
 1986年に初めて日本を訪れ、滞在中に15歳の誕生日を迎えたキーシン。以来来日を重ね、2011年10月には40歳の誕生日をサントリーホールで祝った。今回の来日はそれから2年半ぶりと、待ちに待たれたものだ。
 プログラムがまた良い。前半で取り上げるのは、わずか31年の生涯をかけぬけたシューベルト晩年の大作のひとつであるピアノ・ソナタ第17番。心の内を吐露するような輝かしい作品に、キーシンの確かなタッチとミステリアスな精神性が相まった、胸に響く演奏が期待できそうだ。
 一方後半のスクリャービンは幻想ソナタから始め、練習曲へと続ける。特にキーシンが少年時代から取り組んできたという練習曲には、厳しさ、神秘性、豊かな色彩を感じさせるロシア的エッセンスが、強くにじんでいることだろう。
 来日すれば毎回どの会場もいっぱいにする彼に、以前、もっと頻繁に来日してくれないのはなぜかと尋ねたら、「僕は日本が大好きなのですが、僕の身体が時差をなかなか受け付けてくれなくて」ということだった。次の来日も少し先になるかもしれないから、今回も必ずや会場に足を運び、天才の音をしっかり耳に刻んでおきたいものだ。
文:高坂はる香
(ぶらあぼ2014年4月号から)

★4月17日(木)・横浜みなとみらいホール Lコード:37850
 5月1日(木)、4日(日)・サントリーホール Lコード:37364
問:ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040 
http://www.japanarts.co.jp

他公演 
4/13(日)・大阪/ザ・シンフォニーホール Lコード:56396
問:ABCチケットセンター06-6453-6000
4/22(火)・武蔵野市民文化会館
問:0422-54-2011
4/26(土)・福岡シンフォニーホール Lコード:82182
問:アクロス福岡チケットセンター092-725-9112