大人の優しさと懐の大きな愛
実力派の歌手とピアニストによる5人組IL DEVUが待望のファースト・アルバム『DEBUT-デヴュー』をリリースする。シューベルトの「シルヴィアに」カッチーニの「アマリッリ」など正統派の歌曲から、「川の流れのように」の壮麗な合唱ヴァージョン、本家(?)IL DIVO(イル・ディーヴォ)で有名になった「パセラ」、スペイン語版「マイ・ウェイ」や「ホワイト・クリスマス」まで収録された、華麗で気品ある一枚となった。1月と3月には、収録曲を入れたライヴも開かれる。
今回は、テノールの望月哲也と大槻孝志、そして青山貴の3人へのインタビュー。
「IL DEVUとしてのレパートリーは現在30曲くらいありますが、コンサートにいらっしゃるお客さんからアンケートで人気が高かったものを中心に選曲しました。『川の流れのように』はこのアルバムのために、僕らの友人の作曲家に編曲してもらった特別ヴァージョンですが、歌ってみたら結構大変で…日本語の歌詞を大事にして歌っていますが、僕らのオペラティックな部分がよく出た曲だと思います」(望月)
そのユーモラスなネーミングから、つい笑いの要素を連想してしまいがちだが、メンバーは全員一流のオペラ歌手。この秋もメンバーたちは《ワルキューレ》の出演などで大忙しだった。クロスオーバー的なグループとは一線を画した正統派の声楽家集団でありながら、そのキャラクターはとても謙虚だ。
「お客さんが親しみをもって感じてくれるのは嬉しいですし、僕らも気取っていないので自然体でやっています。驚いたのは、地方公演で、僕らの楽屋に料理人の方がいらして、ホットプレートで焼きそばを作っていたのです。残念ながら、歌う前にはそんなに食べられないので…(笑)。打ち上げのときは“めし会”と称して、大いに食べ、音楽についても真剣に語り合います。もちろん、食べるのも真剣ですけど」(大槻)
「見た目の感じが似てると、声の響きも似てくるかも知れません。痩せている方は喉を鳴らした発声が多いけれど、大きい人は身体を響かせることが多いので…サイトウキネンの楽屋で出会った頃から、これはいいユニットになるのでは、という期待がありました。それまでお互いの声も知っていましたし、歌手としての協調性も知っていたけど、まさかここまでアンサンブルが好きだとは…(笑)」(青山)
アンサンブルが大好きで合唱が大好き。そんな共通点をもつ彼らのハーモニーは、成熟した大人の優しさと、懐の大きな愛を感じさせる。「マイ・ウェイ」のようなポップスも、彼らの芸術的知性にかかれば、胸が熱くなるほど感動的な「聖なる音楽」となるのだ。
「ピアノの河原忠之先生は一流の伴奏者でオペラの指揮もされていますが、IL DEVUとして我々は色々なことが出来るね、とよく話します。創作的なオペラをやるのが将来の夢だと…男4人が登場するオペラって、すぐには想像できないですけど(笑)」(望月)
IL DEVUなら大きな夢を叶えられる…そんな気もする。包容力のある温かいハーモニーに包まれた、愛を知る男たちのアンサンブルだ。
取材・文:小田島久恵
(ぶらあぼ2014年1月号から)
こがねいニューイヤーコンサート
by IL DEVU
★2014年1月11日(土)
・小金井市民交流センター
問 小金井市民交流センター
042-380-8077
630コンサート〜充電の60分〜
★2014年3月18日(火)
・第一生命ホール
問 トリトン・アーツ・ネットワーク・チケットデスク03-3532-5702
http://www.triton-arts.net/ja/
【CD】
『DEBUT-デヴュー』
日本コロムビア
COCQ-85036 ¥3150