デビューから15年、そしてさらに先を見つめる
1998年にサントリーホールで鮮烈なデビュー(小林研一郎指揮/日本フィル)を飾って以来、ソリストとして精力的な活動を展開している川畠成道。毎年数多くのリサイタルやオーケストラとの共演を行い、CDリリースを重ねて来た人気ヴァイオリニストが今年12月と来年3月に、デビュー15周年を記念するコンサートを開催する。
「デビュー当時はとにかく1年間頑張ってみようと思って、そこからまた1年、さらにもう1年と積み重ね、5年経った頃から10年を目指し、その10年を過ぎて今は20年に向かって進んでいます。こうして続けてこられたのも家族や関係スタッフ、そして何よりファンの皆さんのおかげです。また演奏家としての自分を支えてくれた作品との出会いもありました。記念コンサートではそうした思い入れのある曲ばかりを演奏します」
先ず12月はシズオ・Z・クワハラ指揮によるキエフ国立フィルハーモニー交響楽団との共演。
「キエフとは一昨年もご一緒しましたが、比較的若いプレイヤーが多い印象で、出てくる音がとても瑞々しい。マエストロも自分とほぼ同世代なので楽しみですね。演奏するヴィヴァルディの『四季』は2005年にボローニャ歌劇場で同室内管弦楽団と収録した思い出の作品。そしてメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲はデビュー・コンサート以来、様々な機会に数え切れないほど弾いてきましたが、オーケストラの中から聴こえてくる演奏者それぞれの個性や想いが感じられ、その度に新鮮な気持ちがします」
来年3月はピアノの仲道郁代、寺嶋陸也やチェロの長谷川陽子らスペシャル・ゲストを迎えてのソロ・コンサート。
「先ほど、作品との出会いについてお話ししましたが、もちろんそれと同じまたはそれ以上に、他の演奏家との出会いも大切です。今回、この15年間で何度も共演させていただいた方々を特別なコンサートにお呼びすることができて本当に幸せ。皆さんに囲まれてお祭り気分で演奏を楽しみたいと思います。特にメンデルスゾーンのピアノ三重奏曲第1番を一緒に演奏できるのが嬉しいですね。長谷川さんとは何度かこの曲をご一緒しましたが、仲道さんとこの曲を演奏するのは初めて。でも、おふたりの相性が素晴らしいので、きっと長谷川さんがうまく繋いで下さることでしょう。共演するのが何の楽器であれ、小編成でも大編成でも、お互いに影響を与え合って一緒にいい音楽を作っていきたいという私のスタンスはいつも同じですね」
1月には紀尾井ホールで盟友ピアニストのダニエル=ベン・ピエナールとのニューイヤーコンサートも。
「新年のおめでたい雰囲気の中、普段の演奏会とはちょっと趣向を変えて、ヴィヴァルディの『四季』より『冬』をジャズ・バージョンで演奏します。ダニエルとはデビュー以前からのつきあいで、共有した時間の積み重ねがお互いに貴重な財産になっています」
かねてから、デビュー20周年にはバッハ「無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ」を全曲録音すると公言しており、こちらも大いに楽しみだ。
「でも、とりあえずは一つひとつの演奏会をしっかりこなすことで、後のことは自ずと見えてくるものだと思います。今までもずっとそうやってきましたし。そして自分がよりステージを楽しむことが大切だと最近は思うようになりました。そういう気持ちはきっと聴き手にも伝わりますからね」
取材・文:東端哲也
(ぶらあぼ2013年12月号から)
川畠成道 デビュー15周年記念コンサート
〈協奏曲 WITH オーケストラ〉
共演:シズオ・Z・クワハラ(指揮) キエフ国立フィルハーモニー交響楽団
曲/メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲ホ短調、ヴィヴァルディ:「四季」より
★12月27日(金)・東京オペラシティコンサートホール Lコード:36097
〈ソロ WITH スペシャルゲスト〉
共演:仲道郁代(ピアノ) 長谷川陽子(チェロ) 他
★2014年3月23日(日)・東京オペラシティコンサートホール Lコード:36109
川畠成道 ニューイヤーコンサート2014 ジャズとクラシックのニューイヤー
共演:ダニエル=ベン・ピエナール(ピアノ)
★2014年1月25日(土)・紀尾井ホール Lコード:35630
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