アンナ・ヴィニツカヤ(ピアノ)

音楽とは私にとって人生ですね

©Esther Haase

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 2007年にエリーザベト王妃国際音楽コンクールを制し、しなやかな音楽性と変幻自在の表現力で聴衆を魅了するロシア出身のピアニスト、アンナ・ヴィニツカヤが今春スタートした新シリーズ『みなとみらいクラシック・マチネ』に登場。彼女にとって特に思い入れの深いシューマンとブラームス、そしてショパンの佳品を披露する。
 まず、演奏家にとって最も大切なことは、とたずねると、「うーん…」と熟考した後に、こんな答えが返ってきた。
「創造力、でしょうか。そして、音楽を自分がどう感じて、どうアプローチすべきなのか、その考え方をしっかりと持っていることが大事です。自分が前面に立つより、まず作曲家の姿がすっと現れるような演奏ができるかどうか。常にそれを目指しています」
 では、演奏家を目指すようになったのはいつからなのだろうか。
「ピアニストの両親のもとに生まれ、物心ついたら、ピアノの前に座っていた感覚です。両親には『娘を演奏家に』との思いがあり、11歳の頃には、すでに自分でもプロになることを意識していました」
 そんな彼女も、今は6歳の男の子と3歳の女の子の母親。「自分の子も、演奏家に?」との問いに、「いいえ」と苦笑する。
 ハンブルク音楽大学に学び、現在も同地を拠点に活躍、母校で教鞭も執る。
「ロシアで学び続けると、ベルトコンベアに乗せられ、“製品”になるように思えたのです。ドイツならば、ブラームスらが実際に生活した息吹を肌で感じ取れる、と考えました」
 また、彼女は、特にパウゼ(休符)が深い意味を持つと語る。
「学生には『パウゼは“休み”ではない』と指導しています。音には出せない、畏怖や歓びを形作る場所なのですから」
 『クラシック・マチネ』は、第1部と第2部の間に90分の休憩をはさむ特殊な構成。第1部ではシューマン「子供の情景」とブラームス「幻想曲集 op.116」と、縁の深い2人の曲集を取り上げる。
「どちらも、小ぶりな作品の集合体。形式的には似通った面がありつつ、独自性も持ち併せています。そんな共通点と違いの両方を、味わっていただきたいと考えました」
 そして、第2部では、ショパンの「24の前奏曲」全曲を弾く。
「ショパンはよく弾くのですが、実は、この作品に関しては、自分にとって今回がほぼ初演になります。譜読みもこれからですが、作品に込められた感情や意味を読み取り、自分の中で咀嚼し、表現していきたいですね」
 彼女にとって、音楽とは「人生そのもの」ということだが、では、ピアノとは?
「作曲家の考えや、それに対する自分の思いを正しく伝えてくれる、いわば仲介役です」
取材・文:寺西 肇
(ぶらあぼ + Danza inside 2016年7月号から)

みなとみらいクラシック・マチネ アンナ・ヴィニツカヤ
9/16(金) 第1部 12:10 第2部 14:30
横浜みなとみらいホール
問:横浜みなとみらいホール チケットセンター045-682-2000 
http://www.yaf.or.jp/mmh