飯森範親(指揮) 日本センチュリー交響楽団

“発展”するオーケストラがマーラーの「第九」で勝負!

飯森範親 ©Yuki Hasuimoto
飯森範親 ©Yuki Hasuimoto

 2014年に創立25周年を迎えた日本センチュリー交響楽団。これを機に首席指揮者に就任した飯森範親とのコラボが好調だ。昨シーズンの楽団のテーマ『挑戦』が、今シーズンは『発展』へと変わり、さらに意欲的なチャレンジが期待できる。
 そんな彼らの意気込みが伝わってくるのが4月定期。東京特別公演で披露した「復活」や、CD化され好評を得ている「大地の歌」と、彼らは継続的にマーラー演奏に取り組んできた。今回は交響曲第9番。純粋な器楽作品ということで、これまでとは一味違う直球勝負である。
 「第九」というと、ベートーヴェン以降「作曲すると命を落としてしまう」というジンクスは有名だ。マーラーもそれを恐れて「大地の歌」にナンバーを振らなかったのだが、結局次の「第九」を完成させて死んでしまった。それに消え入るように終わるアダージョの終楽章を聴くと、死をイメージせざるを得ない気分になる。それを『発展』のシーズンで取り上げる。その心やいかに。
 「9番はマーラーにとっては、次の10番や11番に向けての一つの区切りで、まさか自分が死ぬなんて思っていなかったんじゃないか。そうじゃないと、ここまでのものを込める気力はでてこなかったと思うんですよ」。実に飯森らしい(!)コメントである。演奏に接するたびに「なんて前向きで、溌剌とした音楽をする人だろう」と感じてきたが、どうやら彼の人柄もそのままのようだ。これまでのマーラー観や「第九」への固定観念を打ち破ってくれそうなワクワク感だ。“超ポジティヴ”こそ、発展の極意なり。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ + Danza inside 2016年4月号から)

第208回 定期演奏会
4/8(金)19:00、4/9(土)14:00 ザ・シンフォニーホール
問:センチュリー・チケットサービス06-6868-0591
http://www.century-orchestra.jp