
右:佐川和冴 ©tetsuya okukawa
地域の文化芸術の発信地として愛されている大田区民ホール・アプリコで、注目の若手指揮者とピアニストの共演が実現することとなった。ソリストに迎えられるのは、第21回東京音楽コンクール第1位を受賞し、スケールの大きな演奏で人気を集めるピアニストの佐川和冴。「一番好きなピアノ協奏曲」だと語るチャイコフスキーの第1番を披露する。後半では、ドヴォルザークの交響曲第9番「新世界から」を、ハチャトゥリアン国際コンクールで日本人として初めて優勝し、さまざまなオーケストラから厚い信頼を寄せられている出口大地の指揮で読売日本交響楽団が奏でる。
本公演に先立ち、11月にはトークイベントが行われ、それぞれの演奏曲について聴きどころが語られた。佐川は、チャイコフスキーについて「第1楽章終盤のカデンツァは超絶技巧や美しい旋律など、この作曲家の音楽の魅力が詰まっています。そして第3楽章は会場が一体となって音楽に包まれるような迫力があります。指揮者とのコンタクトも重要な楽曲なので、ぜひそこにもご注目ください」と話す。一方出口は、「『新世界から』は、ネイティブアメリカンの民謡が散りばめられているだけでなく、彼が構想していたオペラのワンシーンが引用されています。〈家路〉としても知られている有名な第2楽章は葬式、第3楽章は結婚式の踊りのシーンなのです。ぜひ当日はそういうことも意識して聴いていただき、楽曲の新たな面に出会ってください」と結んだ。
名旋律のつまった2曲で若き才能の輝きを存分に堪能してほしい。
文:長井進之介
(ぶらあぼ2026年1月号より)
フレッシュ名曲コンサート 読響 × アプリコ 望郷の「新世界」
2026.1/31(土)14:30 大田区民ホール・アプリコ
問:大田区文化振興協会03-3750-1555
https://www.ota-bunka.or.jp

長井進之介 Shinnosuke Nagai
国立音楽大学大学院修士課程器楽専攻(伴奏)修了を経て、同大学院博士後期課程音楽学領域単位取得。在学中、カールスルーエ音楽大学に交換留学。アンサンブルを中心にコンサートやレコーディングを行っており、2007年度〈柴田南雄音楽評論賞〉奨励賞受賞(史上最年少)を機に音楽ライターとして活動を開始。現在、群馬大学共同教育学部音楽教育講座非常勤講師、国立音楽大学大学院伴奏助手、インターネットラジオ「OTTAVA」プレゼンターも務める。
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