プレトニョフが京都で奏でる、想いつなぐコンチェルト

ミハイル・プレトニョフ ©Irina Shymchak

 ローム株式会社の創業者であり、ローム ミュージック ファンデーションの設立者でもある佐藤研一郎(1931〜2020)の意志を引き継ぐために2022年1月にスタートした「Ken Sato Memorial Concert」。これまではピアノ・ソロの公演であったが、記念すべき5回目ではピアノ・コンチェルトが披露される。また、Vol.5からVol.9までは、1980年のショパンコンクールで入賞し、近年は同コンクールの審査員も務めている海老彰子がプロデュースを手掛け、世界的な音楽家を招聘していくという。

 Vol.5は、ミハイル・プレトニョフが登場。彼は1978年のチャイコフスキー・コンクールに優勝した一方で、1990年に指揮者としてロシア・ナショナル管弦楽団を創設。しかし、2022年のロシアのウクライナ侵攻後、プレトニョフはスイスを活動拠点とするようになる。ロシアとの往来が困難になり、自ら作った楽団の音楽監督を辞め、スロヴァキアのブラティスラヴァでラフマニノフ国際管弦楽団を創設。その名称は、ラフマニノフがロシア革命によって祖国を離れざるをえなかった音楽家であったことから付けられたのであろう。

 今回、プレトニョフは、高関健指揮京都市交響楽団とともにモーツァルトのピアノ協奏曲第24番と同第26番「戴冠式」を演奏する。悲劇的なハ短調の第24番は、ドイツ・カンマーフィルとの録音も残す、プレトニョフの得意のレパートリー。華やかな第26番をどう演奏するのかも注目である。プレトニョフのピアニストとしての今を知るコンサートが楽しみだ。

文:山田治生

(ぶらあぼ2025年9月号より)

Ken Sato Memorial Concert Vol.5~世界の巨匠が奏でる極上のモーツァルト~
2025.10/31(金)19:00 ロームシアター京都 メインホール
問:otonowa 075-252-8255 
https://www.rmf.or.jp


山田治生 Haruo Yamada

音楽評論家。1964年、京都市生まれ。1987年慶應義塾大学経済学部卒業。雑誌や演奏会のプログラム冊子に寄稿。著書に「トスカニーニ」、小澤征爾の評伝である「音楽の旅人」、「いまどきのクラシック音楽の愉しみ方 」、編著書に「戦後のオペラ」、「バロック・オペラ」、「オペラガイド」、訳書に「レナード・バーンスタイン ザ・ラスト・ロング・インタビュー」などがある。