【CD】ベートーヴェン:ピアノ三重奏曲 作品44・97「大公」・121a/ヘーデンボルク・トリオ

 日本人の母親を持つ三兄弟によるヘーデンボルク・トリオは、ベートーヴェンのピアノ・トリオの録音に取り組んできた。これはその完結編。「大公」という曲名にふさわしい、貴族の優雅さを湛えた品のよい演奏だ。まずピアノの発音やタッチが極めて繊細。軽やかで転がるような粒立ちを持った音を息の乱れなく丁寧にコントロール。精緻に編まれたレースのごときクリアなピアノのテクスチュアの上に弦の柔らかく優しいサウンドが乗って、なんともノーブルで心地よいアンサンブルになっている。まるで呼吸するように自然で、音楽の国オーストリアの家庭で育った3人にして可能な親密さを感じた。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2025年8月号より)

【information】
CD『ベートーヴェン:ピアノ三重奏曲 作品44・97「大公」・121a/ヘーデンボルク・トリオ』

ベートーヴェン:ピアノ三重奏のための14の変奏曲、ピアノ三重奏曲第7番「大公」、ピアノ三重奏のための「おいらは仕立屋のカカドゥ」による変奏曲

ヘーデンボルク・トリオ
【ヴィルフリート・和樹・ヘーデンボルク(ヴァイオリン) ベルンハルト・直樹・ヘーデンボルク(チェロ) ユリアン・洋・ヘーデンボルク(ピアノ)】

カメラータ・トウキョウ
CMCD-28396 ¥3080(税込)