2024年12月の海外公演情報

Wiener Staatsoper Photo by Dimitry Anikin on Unsplash

『ぶらあぼ』誌面でご好評いただいている海外公演情報を「ぶらあぼONLINE」でもご紹介します。
[以下、ぶらあぼ2024年9月号海外公演情報ページ掲載の情報です]

曽雌裕一 編

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 12月の初旬から中旬にかけて、プフィッツナーのオペラ「パレストリーナ」が、ティーレマン指揮によりウィーン国立歌劇場で上演される。この作品は、各幕のはじめに演奏される前奏曲こそ有名だが、こと全曲となるとほとんど上演機会には恵まれない。音楽があまりに地味で真面目すぎ、大衆受けする劇的要素にも甘美なメロディーにも欠けるから、とよく言われるが、ティーレマンの指揮で、演奏がウィーン・フィル(ウィーン国立歌劇場管)ともなれば、かつては、R.シュトラウスをもしのぐ人気を呼んでいたこともあるこの作曲家の代表的オペラを聴いてみる価値は必ずあるに違いない…ということで、まずは12月の最初の注目公演として取り上げてみた。それに、もしもこの時期ウィーンに滞在できるのであれば、注目指揮者クラウス・マケラがウィーン・フィルでマーラーの交響曲第6番を振るという興味津々の演奏会にも遭遇できる。

 とはいえ、忙しい師走の真っ只中にのんきに旅行などできるヤツがいるか、とお叱りを受けることは必定なので、年末年始休暇の演奏会予定もフォローしておこう。ウィーン・フィルのニューイヤー・コンサートに先立つ12月30日・31日の同内容の演奏会。リッカルド・ムーティの指揮で1月1日の演奏会に比べればチケット代も安いからお得…とはいうものの、それでもエージェントに手数料を払ったりするとウン十万もかかったりするので、余裕のある方以外にはやはり高嶺の花。それであれば、ペトレンコ指揮ベルリン・フィルとか、サロネンの客演するNDRエルプフィル(ハンブルク)のジルヴェスター(大晦日)コンサートなどはいかがだろうか。前者では、R.シュトラウスの「ばらの騎士」のワルツや「サロメ」の「7つのヴェールの踊り」で華々しく年の暮れを祝う。かたや後者は、同じR.シュトラウスの「ツァラトゥストラはかく語りき」を前半に、締めはラヴェルの「ボレロ」という、何だか某在京オケ年末恒例のカウント・ダウン・コンサートのような盛り上がり必至の曲目。他方、ベルリン州立歌劇場の新音楽監督となったティーレマンは、この劇場のオケ(シュターツカペレ・ベルリン)を振って、ドイツ・ワイマール時代のトーキーや劇場作品からの音楽を取り上げるという興味深い演目。一時期、ドイツでも日本式のベートーヴェン「第九」が年末恒例の催しとなっていたが、最近はさすがに変化が見えている。

 年末に限らず、12月中のオペラの注目公演を眺めると、7日に新シーズンの開幕を迎えるミラノ・スカラ座のヴェルディ「運命の力」はやはり見逃せない。ネトレプコとカウフマンという当代きっての人気歌手を揃えて華やかに開幕する。一方、J.シュトラウスの「こうもり」は年末定番演目の一つだが、今年は、ミンコフスキが手兵のレ・ミュジシャン・デュ・ルーヴルを率いて、ドイツのバーデン=バーデン祝祭劇場やスペイン各地の劇場でこの演目を上演する。その他の公演では、メトロポリタン歌劇場で大晦日を彩るヴェルディ「アイーダ」に対して、ガランチャがアムネリスを演じるバイエルン州立歌劇場の同「アイーダ」。あるいはフランクフルト歌劇場でプレミエとなるヴェルディ「マクベス」(グックアイス指揮)に対して、またもやバイエルン州立歌劇場でバッティストーニの指揮する同「マクベス」の対決なども面白い。ヴェルディではチューリヒ歌劇場の「仮面舞踏会」、パリ・オペラ座の「リゴレット」などもある。シャンゼリゼ劇場のプーランク「カルメル派修道女の対話」やヘンデル「アルチーナ」も要注目。ちなみにこの「アルチーナ」はアン・デア・ウィーン劇場、テアトロ・レアルでも上演される。オーケストラでは、活動を復活した97歳(!!)のブロムシュテットがベルリン・フィルで振るブルックナー9番と、ウェルザー=メストがライプツィヒ・ゲヴァントハウス管で振るマーラー9番の「9番対決」に目が離せない。

(曽雌裕一・そしひろかず)
(コメントできなかった注目公演も多いので本文の◎印をご参照下さい)