リフシッツと旅するバッハの音楽宇宙
来日の度、演奏家の内面を映し出すような深いプログラムで強い印象を残すリフシッツ。昨年のベートーヴェン後期三大ソナタによる演奏会でも、高い集中力で奏される一つひとつの音に満員の聴衆が耳をそばだてる、特別な空気がホールを満たした。知性と理性、作品への没頭を見事なバランスで共存させ、至高の音楽を紡ぎ出すピアニストだ。
そんな彼が今回取り組むのは、長きにわたり探究を続けてきたバッハ作品。もともとリフシッツが一躍注目を集めたのは、17歳の頃、モスクワ・グネーシン特別音楽学校の卒業記念公演で演奏した「ゴルトベルク変奏曲」の録音が評価されたことがきっかけだった。以来約20年の時を経て、彼のバッハ解釈における評価は不動のものとなった。
今回は全3回公演で、バッハの天才的な音楽に立ち向かう。演奏するのは「平均律クラヴィーア曲集」第1巻(2/7)、第2巻(2/15)、そして「インベンションとシンフォニア」と晩年の傑作「音楽の捧げ物」(2/14)という、壮大なプログラム。
「平均律」はこれまでさまざまな形で取り上げてきたが、第1巻、第2巻全曲をひとつのシリーズで演奏するのは初めて。演奏機会の少ない「インベンションとシンフォニア」がリフシッツの手でどう構築されるのかも興味深い。精巧かつ多彩な音で紡がれるポリフォニックな音楽は、新しい発見をもたらしてくれそうだ。
貴重なプログラミングによる3公演。リフシッツの音楽に身を任せ、果てしなく広がるバッハの宇宙を旅してみたい。
文:高坂はる香
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年2月号から)
平均律クラヴィーア曲集 第1巻
2/7(土)14:00 所沢市民文化センターミューズ マーキーホール
問:ミューズチケットカウンター04-2998-7777
「インベンションとシンフォニア」
「音楽の捧げ物」
2/14(土)14:00 東京文化会館(小)
問:ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040
平均律クラヴィーア曲集 第2巻
2/15(日)14:00 フィリアホール
問:フィリアホールチケットセンター045-982-9999