牛田智大 ピアノ・リサイタル

成長を続ける俊英の今を聴く

©Ariga Terasawa

 24歳にしてすでにデビュー12年のキャリアを持つ、ピアニストの牛田智大。近年は優れた指揮者たちやオーケストラとの共演に加え、海外での研鑽や国際コンクールへの挑戦なども重ね、大きくその音楽性を変化させている。彼の音楽的な探究の旅、その変貌ぶりを追いかけることを楽しみにしているファンも多いことだろう。

 そんな牛田が今度のリサイタルで取り上げるのは、モーツァルト、シューマン、ショパンという、ピアニストにとって、音楽性、個性がはっきりと現れやすい作曲家たちだ。

 前半はモーツァルトの最初期のピアノ・ソナタである第4番 K.282に始まり、シューマンの「クライスレリアーナ」へ。今の牛田がシューマンの空想の世界をどう捉えているのか、作曲家への共感の持ち方がよく見えてきそうなレパートリー。一体どんな音楽を届けてくれるのだろうか。

 そして後半はショパン。2021年のショパン国際ピアノコンクールへの挑戦も経て、彼が継続して理解を深めようとしている作曲家といえる。今回は即興曲第1番から第3番という小品に加えて、後期の大作であるピアノ・ソナタ第3番に挑む。時間をかけてじっくりとこの作曲家のレパートリーを広げていく彼が、今たどり着いたショパン像を描いてくれることだろう。

 いずれも歌心が求められる作品ばかりなので、牛田ならではの一音一音を大切にした歌と呼吸を存分に味わうことができそうだ。ピアニストとしての彼の現在地をじっくりと聴こう。
文:高坂はる香
(ぶらあぼ2024年2月号より)

2024.3/22(金)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:ジャパン・アーツぴあ0570-00-1212 
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