ギターの古典とも言うべきソルの「幻想曲」から3曲をカップリングした。第7番はメランコリックなシャンソンに豊かな変奏を加えていく。第5番はパイジェッロのアリアに基づく大規模な変奏曲だが、イタリア・オペラの精神を一本のギターで見事に捕まえる。弟子の死を悼んだ晩年の「悲歌風幻想曲」は切々と歌われる哀歌だ。解説によれば、原はソルと同じく爪を伸ばさず指頭を使って演奏するという。声部が良く分離し、旋律はニュアンスに富み音色は千変万化する。解釈が肉を通じてダイレクトに音となるのだ。何気ないフレーズにまでアイディアが詰まった、べテランによる緻密な演奏だ。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2024年2月号より)
【information】
CD『ソル:ギターのための幻想曲/原善伸』
ソル:幻想曲第7番、同第5番 パイジェッロの「うつろな心」による幻想曲、悲歌風幻想曲
原善伸(19世紀ギター)
コジマ録音
ALCD-7297 ¥3300(税込)