東京オペラシティ B→C 亀居優斗(クラリネット)

クラリネットの可能性を体感する貴重な機会

(c)Kosuke Atsumi

 東京オペラシティ名物「B→C」の中でも、管楽器奏者の回は特に新鮮な刺激を受けるケースが多い。何しろ管楽器は、ソロを聴く機会が少ない上に、演目が各楽器の枠内にとどまりがちだ。その点、クオリティの高い作品や意欲的な新作が渾身の演奏で披露される当シリーズは、楽器に馴染みがない人にも音楽的な魅力が充分伝わるがゆえに、足を運ぶ甲斐がある。

 クラリネットの亀居優斗の公演もその好例となろう。東京藝大で学んだ彼は、2021年日本音楽コンクールで優勝した注目の逸材。18〜22年東京佼成ウインドオーケストラに在籍し、22年4月からは神奈川フィルハーモニー管弦楽団の首席奏者を務めている。今回は、これまで吹奏楽、オケ、ソロのフィールドで培ってきた自身の経験をフルに生かした「亀居優斗の総集編」。聴きどころは、彼の強みである“音色の素晴らしさ”だ。

 プログラムは、クラリネット発祥の地ドイツと、自身が生きる日本に焦点を当てた内容。まずB=バッハのオルガン曲、前奏曲とフーガ「聖アン」BWV552を聴かせる。これは本人いわく「クラリネットだときっと心地よい響きになる」。他のドイツ組は、「視覚的にも面白いことがある」と語る人気作曲家&クラリネット奏者ヴィトマンの作品と、陰影に富んだレーガーのソナタ。日本勢は、バロックのソナタ構成を模した伊藤康英の作品、音の明暗に着目した坂田直樹の作品に、大学時代からの盟友で「綺麗な旋律を書いてくれる」葛西竜之介への委嘱作と、2020年代に誕生した興味津々の最新作が並ぶ。

 なお、彼ゆかりの地・名古屋でもB→C公演を開催。ここはぜひ清新な感覚を味わおう。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2023年10月号より)

2023.10/1(日)14:00 名古屋/電気文化会館 ザ・コンサートホール
問:ON music project 080-4300-7611 
https://www.on-music-project.com
10/3(火)19:00 東京オペラシティ リサイタルホール
問:東京オペラシティチケットセンター03-5353-9999 
https://www.operacity.jp