2023年6月の海外公演情報

Wiener Staatsoper Photo by Dimitry Anikin on Unsplash

『ぶらあぼ』誌面でご好評いただいている海外公演情報を「ぶらあぼONLINE」でもご紹介します。海外にはなかなか出かけられない日々が続きますが、“妄想トラベル”を楽しみましょう!
[以下、ぶらあぼ2023年3月号海外公演情報ページ掲載の情報です]

曽雌裕一 編

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 6月も音楽祭企画からのご紹介。まずは、ライプツィヒでの恒例「バッハ音楽祭」。ヘレヴェッヘ、コープマン、ムニエ等のバッハに見識ある指揮者陣や、ゲヒンガー・カントライ、アマルコルドといったこの音楽祭常連ともいえる団体など多数のアーティストがずらりと並ぶ。その中で、トリを務めるのは鈴木雅明指揮するバッハ・コレギウム・ジャパン。すっかりこの音楽祭の顔になっている。

 6月といえば「ミュンヘン・オペラ・フェスティバル」の開幕月だが、今年は、オーストラリアの現代作曲家ブレット・ディーンの「ハムレット」で幕開けという異色の展開。とはいうものの、この作品、指揮者のユロフスキーが2017年に「グラインドボーン・オペラ・フェスティバル」で世界初演を行ったいわく付きの作品。初演の際オフェーリアの熱演で話題となったバーバラ・ハンニガンはもうここには登場しないが、代わりにノルウェー生まれの話題のコロラトゥーラ、キャロライン・ウェッターグリーンがこの役を演じる。そういえば、バイロイト音楽祭のエリーザベト役で大喝采を浴び、今やスター街道を突き進むリーザ・ダヴィドセンもノルウェー人だし、2月にサロメ役でウィーン国立歌劇場を湧かせたマリン・ビストレムはスウェーデン人。最近、北欧系女声歌手の存在感が著しい。なお、ミュンヘンには、この後、チョン・ミョンフンの指揮するヴェルディ「オテロ」が続く。

 その他の音楽祭では、ルイージがウィーン響を指揮してフランツ・シュミットの交響曲第2番を演奏する「ウィーン第40回国際音楽祭」、ケント・ナガノがヴィトマンのオラトリオ「ARCHE」を指揮する「ハンブルク国際音楽祭」、同じナガノがドレスデン音楽祭管を振ってワーグナー「ラインの黄金」を演奏する「ドレスデン音楽祭」、ツィメルマン、アルゲリッチ、シフ、ソコロフらの巨匠陣総出演の「ルール・ピアノ・フェスティバル」、ブロムシュテットがバンベルク響と共に元気に登場する「キッシンゲンの夏音楽祭」、バーゼル生まれのヴァイオリニスト笠井友紀が韓国人作曲家パクパーン・ヨンギーの「Die Blüte」を演奏したり、ファビオ・ビオンディがバンベルク響を振る「ヴュルツブルク・モーツァルトフェスト」、エラス=カサドとSWR響でワーグナー「パルジファル」第3幕が聴ける「バーデン=バーデン聖霊降臨祭音楽祭」、コスキーの演出に期待のかかる「グラインドボーン・オペラ・フェスティバル」のプーランク「カルメル派修道女の対話」など、まあ話題には事欠かない。なお、これらの音楽祭を横断するようにアンネ=ゾフィー・ムターのヴァイオリンを中心としたアンサンブルが行う複数の公演にも要注目。

 通常公演では、ロト=レ・シエクルの多彩な曲目をひっさげた連続公演(ムジークフェライン)、ベルリン・コーミッシェ・オーパーのヘンデル・ツィクルス、ベルリン古楽アカデミーのグレトリ「ゼミールとアゾール」公演、かつてミュンヘン・フィルの音楽監督であったティーレマンがバイエルン放送響の方に登場して演奏するブルックナーの交響曲第5番、シュトゥットガルト歌劇場でプレミエとなる大作メシアンの「アッシジの聖フランチェスコ」、スカラ座とオランダ国立オペラでのドヴォルザーク「ルサルカ」プレミエ対決、スペイン2大歌劇場でのヤーコプスとクリスティの指揮、ラトル=ロンドン響のメシアン「トゥーランガリラ交響曲」など、これまた枚挙に暇がない。おや、ベルリン・フィル、シーズン最後のワルトビューネ公演をネルソンスに委ねたペトレンコはどこへ行ったのか。何とコンセルトヘボウ管でバルトークの「かかし王子」全曲を振っているではないか。これも大注目。さらに、本文には触れられなかったが5月から6月にかけてコンヴィチュニーがドルトムント劇場でワーグナー「ジークフリート」を演出している(https://www.theaterdo.de/produktionen/detail/siegfried/)。ぜひHPでご確認を。
(曽雌裕一・そしひろかず)
(コメントできなかった注目公演も多いので本文の◎印をご参照下さい)