バスバリトンの俊英が描く、バラードの世界
岡山県出身の木村善明は2007年に渡独。14/15年シーズンからドイツ・ビーレフェルト歌劇場の専属を務める多忙な歌い手である。
木村の声種はバスバリトン。力強く濃い声音を武器に《ラインの黄金》のアルベリヒや《後宮からの誘拐》のオスミンなど、強烈な人物像の表現を得意とする。豊かな声量を有し、ドイツ語の長大なセリフもこなせる彼ならではのレパートリーである。
その木村が8月に東京でリサイタルを開催。選曲の中心は「物語詩」による2つのバラード。今回はシューベルト〈人質〉とレーヴェ〈石崖の上のグレゴール〉をとりあげる。〈人質〉は太宰治『走れメロス』の原作たるシラーの詩に基づき、〈グレゴール〉は、愛した女王が実母であった悲劇の騎士が主人公となる(詩:クーグラー)。いずれも木村の熱く豊かなフレージングが曲を深く掘り下げるはず。ピアノの子安ゆかり、日本語訳を朗読する俳優・山本郁子の熱演と共に、若き名歌手のきりっとした歌いぶりをお楽しみに。
文:岸純信(オペラ研究家)
(ぶらあぼ2022年8月号より)
2022.8/5(金)19:00 トッパンホール
問:ヤタベ・ミュージック・アソシエイツ03-3787-5106
https://y-m-a.com
他公演
7/29(金) 岡山/ルネスホール(ギフトミュージックカンパニー:木村080-1933-4844)