カウンターテナー青木洋也とソプラノ藤崎美苗による珍しい二重唱曲集。ロマン派のメンデルスゾーンとシューマンの間にバロックのパーセルの曲が入る興味深い構成だ。とりわけパーセルは原曲ではなく、ブリテンのリアライゼーションがなかなか秀逸で、20世紀のテイストも味わえる。そのうち「だめ、抵抗しても無駄」は、反行カノンがリフレインで何度も出てきて面白い。その意味は恋の歌のようでも、他のことのようでもある。メンデルスゾーンの二重唱では、ハリのあるソプラノと透明なカウンターテナーが交互になったり、一緒になったりして美しい響きを生み出す。シューマンはひとひねりが楽しい。
文:横原千史
(ぶらあぼ2022年5月号より)
【information】
CD『あなたが音楽そのものだと―デュエット&ソロ―/青木洋也&藤崎美苗』
メンデルスゾーン:挨拶、秋の歌、民の歌、別れ/パーセル(ブリテンによるリアライゼーション):わたしの安息はもうどこにもない、朝の讃歌、祝福された乙女の忠告、だめ 抵抗しても無駄、もし音楽が愛の糧ならば(第1稿)、夕べの讃歌/シューマン:わたしのバラ、秋の歌、美しい小さな花々 他
青木洋也(カウンターテナー)
藤崎美苗(ソプラノ) 越知晴子(ピアノ)
コジマ録音
ALCD-7278 ¥3080(税込)