アラン・ギルバート(指揮) 東京都交響楽団

北欧のシリアスな交響曲と名技炸裂のラフマニノフ

 東京都交響楽団の第931回定期演奏会Bシリーズに登場するのは首席客演指揮者のアラン・ギルバート。都響とはこれまでに数々の名演を聴かせてくれたギルバートだが、今回のプログラムはとりわけ興味深い。20世紀スウェーデンの作曲家ペッテションの交響曲第7番と、小曽根真をソリストに迎えたラフマニノフのピアノ協奏曲第2番という意外性のある組合せだ。

 ペッテションの交響曲第7番は1967年の作曲。日本で演奏されるのは84年の渡邉曉雄指揮日本フィル以来というから、ほとんどの方にとってはなじみの薄い作品だろう。第16番まで交響曲を完成させたペッテションだが、そのなかで代表作と言えるのがこの第7番。北欧の作曲家というとシベリウス的な抒情性を思い浮かべる方もいるかもしれないが、ペッテションは苦悩と葛藤に満ちたシリアスな作風を特徴とする。シベリウスやグリーグよりも、むしろマーラーからショスタコーヴィチにつながる系譜を連想させる。交響曲第7番では、悲痛さや諦念のなかにしばしば浄化された響きが立ち現れ、独自の美の世界が描き出される。

 そんなペッテションがもたらす暗闇の対極にあるのがラフマニノフだ。華やかな技巧とむせかえるようなロマンにあふれたピアノ協奏曲第2番がまばゆい光を放つ。世界的ジャズピアニスト小曽根真はギルバートとも旧知の間柄。ふたりの偉才の共演はこれまでにない鮮烈なラフマニノフを生み出してくれるにちがいない。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ2021年7月号より)

第931回 定期演奏会Bシリーズ 
2021.7/1(木)19:00 サントリーホール
問:都響ガイド0570-056-057 
https://www.tmso.or.jp