今年のGWは上野で名曲を聴こう
早くもゴールデンウィークに行われる注目公演のニュースが届いた。5月3日に東京文化会館で行われる「N響★カンタービレコンサート」である。まとまった休みの取れるゴールデンウィークに、普段とは違ったリラックスした雰囲気でコンサートを楽しみたいという方は多いだろう。しかも、演奏のクオリティが高い本格的なオーケストラのコンサートなら、より楽しいはず。そんな、ちょっと贅沢な希望をかなえてくれるコンサートである。
NHK交響楽団は日本を代表するオーケストラとして、昨年ザルツブルク音楽祭に出演して、ヨーロッパの聴衆に驚きを与えた。普段は東京・渋谷のNHKホールと六本木のサントリーホールで定期演奏会を開催している。そのN響を東京文化会館で聴く機会は意外と少なく、今回はとても貴重な機会となる。
演奏曲目も名曲を集めた。ドヴォルザークの出世作「スラブ舞曲」の第1集第1番(作品46-1)、同じドヴォルザークの傑作「チェロ協奏曲」、そしてチャイコフスキーの有名なバレエ音楽「白鳥の湖」(抜粋)である。19世紀末から20世紀初頭にかけて、東欧とロシア、そしてアメリカでも活躍した二人の作曲家の作品は、オーケストラの演奏会でよく取り上げられているが、今回のような組み合わせは珍しい。
演奏家にも注目したい。タクトをとるのは渡邊一正。東京フィルハーモニー交響楽団指揮者としても活躍中で、オーケストラ曲だけでなく、オペラ、バレエ作品の指揮でも手腕を発揮している。新国立劇場で2006年に行われた新演出の「白鳥の湖」公演も成功に導いた。N響との共演経験も豊富で、しかもバレエ曲も得意としている渡邊の流麗な音楽作りを、東京文化会館で体験出来るのだ。
ドヴォルザークの「チェロ協奏曲」で独奏チェロを演奏するのは宮田大。若手チェリストの登竜門として知られるロストロポーヴィチ国際チェロコンクール(パリで開催)で日本人として初めて優勝した。桐朋学園大学を卒業した後は、ジュネーヴ音楽院、クロンベルク・アカデミーなどで学んでいる。ヨーロッパだけでなく日本各地でも演奏会を行っているが、小澤征爾指揮水戸室内管弦楽団と2012年にハイドンのチェロ協奏曲第1番を共演した演奏会はDVDとしても発売されている。いま伸び盛りの演奏家とN響の共演という点でも注目したいコンサートである。
1961年に開館した東京文化会館は、ちょうど上野の森の玄関口にある。上野駅の公園口を出ると、すぐ目の前という抜群のロケーションを誇る。そして、コンサートの鑑賞だけでなく、上野公園内の様々な美術館、博物館などを回るようなスケジュールの設定も可能だ。動物園もあるし、新緑の公園内などを散歩するのも良いだろう。1日を楽しむプランを立てやすいコンサート会場でもあるのだ。自分なりの休日の楽しみ方を発見する、そんな良いチャンスかもしれない。「N響★カンタービレコンサート」を中心にして、新しい休日の過ごし方を考えてみよう。
文:片桐卓也
(ぶらあぼ2014年2月号から)
Information
N響★カンタービレコンサート
5月3日(土・祝)15:00・東京文化会館
出演:NHK交響楽団、渡邊一正(指揮)、宮田大(チェロ)
問:ローソンチケット0570-000-407(オペレーター) 0570-084-003(L35300) Lコード:35300