楽曲の構造を隅々まで読み解き、圧倒的な技巧によってそれらを美しい芸術作品として聴き手に届けてくれるピアニストの岡田博美。幅広いレパートリーを誇る彼だが、今回取り組んだのはドイツ・ロマン派を代表するプログラム。ブラームスの「パガニーニの主題による変奏曲」ではその超絶技巧を存分に発揮しつつ、楽曲全体を見事にまとめあげ、比類なき芸術作品として聴かせてくれた。シューマンの「子供の情景」では彼の持ち味である美音をいかんなく発揮。繊細な歌が紡がれており、最後を飾る「クライスレリアーナ」でも、その歌心とともに岡田ならではの明快な構築性が光る。
文:長井進之介
(ぶらあぼ2021年2月号より)
【information】
CD『ブラームス:パガニーニの主題による変奏曲 他/岡田博美』
ブラームス:パガニーニの主題による変奏曲/シューマン:子供の情景、クライスレリアーナ
岡田博美(ピアノ)
収録:2008年11月&2013年11月&2019年11月、東京文化会館(小)(ライブ)
カメラータ・トウキョウ
CMCD-28376 ¥2800+税