20世紀ロシア2大巨星の名作でさらなる深化を聴く
昨年、グリンゴルツはパガニーニとシャリーノを組み合わせた独奏超難曲プロをさらりと弾いてのけ、観客の度肝を抜いた。音楽が技術的な困難さを超えて、いわば無重力空間に解き放たれたようにイマジネーションの翼を広げたのだ。
さて、今年は故国ロシアの作品をひっさげ、トッパンホールに15年ぶりに登場する。前半はショスタコーヴィチ「ヴァイオリン・ソナタ」。長く暗い瞑想の間に硬質なリズムを刻むスケルツォが挟まれ、晩年のショスタコーヴィチの精神の深淵をのぞかせる。後半はストラヴィンスキー作品集。「火の鳥」「ナイチンゲール」「妖精の接吻」(ディヴェルティメント)といった名作バレエやオペラのナンバーを中心とした多彩な小品を並べており、重厚な前半から一転して軽やかさや透明感を演出してくるに違いない。
ピアノはペーター・ラウル。すでにグリンゴルツとは共演も多く、ストラヴィンスキーは二人でデュオの全集まで録音している。強力なパートナーと共に深化を続けるグリンゴルツの今を聴け!
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2018年10月号より)
2018.11/13(火)19:00 トッパンホール
問:トッパンホールチケットセンター03-5840-2222
http://www.toppanhall.com/