耳新たなチャイコフスキー体験
チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲と交響曲第5番…読売日本交響楽団の2月の土曜・日曜マチネーシリーズは、まごうことなき名曲コンサートだ。ロシア情趣と西欧の風味が見事に融合した極め付けの名作を、近年ますますゴージャスな読響サウンドで堪能すればそれでいい。だが、指揮がカンブルランとなれば、若干話が違ってくる。常任指揮者として7年を経た彼は、読響に精緻で引き締まった美感をもたらした。キビキビしたテンポによるその演奏は、ソリッドで見通しがいい。それゆえ彼が振ると、聴き慣れた名曲とて新鮮に響く。かつてのチャイコフスキー「悲愴」も、ベートーヴェン「第九」も、昨秋のシューベルト「グレイト」もそうだった。しからば今回のチャイコフスキーはいかに? 中でも、ある種の表現パターンが定着している(というか、そこから逃れるのが難しい)交響曲第5番が、どのように演奏されるのか? 時に辟易させられる濃厚さを排した、かつてないチャイコフスキー像への期待に胸が膨らむ。
ヴァイオリン協奏曲のソロは、初来日のシモーネ・ラムスマ。彼女は、現在急成長中のオランダ人奏者で、シカゴ響、コンセルトヘボウ管、フランス国立管等の著名楽団やズヴェーデン、ルイジといった名指揮者と共演している。2006年のデビューCDのピアノが三浦友理枝という点でも近しい存在だ。彼女もまた過剰な粘り気のない、清冽でナチュラルなタイプ。カンブルランのアプローチとも合いそうなだけに、今回のパフォーマンスが注目される。
興味津々の本公演、全てに清新なチャイコフスキー体験が待っている。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ 2017年1月号から)
第194回 土曜マチネーシリーズ
2017.2/4(土)14:00 東京芸術劇場 コンサートホール
第194回 日曜マチネーシリーズ
2017.2/5(日)14:00 東京芸術劇場 コンサートホール
問:読響チケットセンター0570-00-4390
http://yomikyo.or.jp/