
2015年チャイコフスキー国際コンクールで優勝し、一躍注目を集めたアンドレイ・イオニーツァが、日本で初めてJ.S.バッハの無伴奏チェロ組曲全曲演奏会を行う。1994年ルーマニアに生まれた彼は、ベルリン芸術大学で学び、多数のコンクールで優秀な成績を収めた稀代の名手。これまでに、ブロムシュテット指揮シカゴ響、ゲルギエフ指揮ミュンヘン・フィル等と共演し、カーネギー・ホール、ウィグモア・ホールほか多くの著名会場でリサイタルを行っている。
チェロのバイブルであるバッハの無伴奏組曲全曲演奏は、もちろん奏者にとっての勝負どころだが、イオニーツァは、2016年の初来日リサイタルでも冒頭でバッハの無伴奏組曲第3番をしなやかに奏でているし、18年録音のデビュー・アルバム『無伴奏チェロのための作品集』にも第1番を収録している。ちなみに、他にコダーイ等を収録した当CDは、グラモフォン誌から「卓越した才能、豊かなイマジネーション」と絶賛された。また、ベルリンで学び、14年に難関ミュンヘン国際音楽コンクールで第2位を獲得したドイツでの実績からも、バッハの組曲全曲は待ち望まれた公演といえるだろう。
今回は、第一部が1、3、5番、第二部が2、4、6番と、奇数、偶数番号ごとに分けられているのも特徴的。すなわち、全曲通しはもとより、有名曲を含む“聴きやすい”第一部と、“奏者にとって難儀な”第二部を集中的に味わうこともできる。ここは、その圧倒的な技量と豊かな表現力を生かした独奏に耳を傾け、チェロの聖典の新スタンダードたり得る演奏を満喫したい。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2026年4月号より)
アンドレイ・イオニーツァ J.S.バッハ無伴奏チェロ組曲全曲演奏会
2026.5/11(月) 【第一部】17:00 【第二部】19:30 浜離宮朝日ホール
問:パシフィック・コンサート・マネジメント03-3552-3831
https://www.pacific-concert.co.jp

柴田克彦 Katsuhiko Shibata
福岡県生まれ。音楽マネージメント勤務を経て、フリーの音楽ライター・評論家&編集者となる。雑誌、コンサート・プログラム、Web、宣伝媒体、CDブックレットへの、取材・紹介記事や曲目解説等の寄稿、プログラム等の編集業務を行うほか、講演や講座も受け持つなど、幅広く活動中。著書に『山本直純と小澤征爾』(朝日新書)、 『1曲1分でわかる! 吹奏楽編曲されているクラシック名曲集』(音楽之友社)。

