
ベーゼンドルファー・ジャパンからTOPPANホールに貸与されているModel250に光を当てる「1909年製ベーゼンドルファーの息吹」の3回目。スタインウェイDとの比較という趣向だ。長くウィーン国立歌劇場でバレエの稽古に使われていた楽器。古楽器というよりは、モダン楽器のヴィンテージと位置付けられる。ピアノの基幹構造であるアクション部はイギリス式で、「シュワンダー」と呼ばれるシングルスプリング式。20世紀後半まで多くのメーカーがこれを採用していた。連打性能こそ現代のダブルスプリング式に譲るものの、音の立ち上がりや余韻の自在なコントロールから生まれる豊かな音色を好む奏者は今も少なくない。鍵盤は通常より4鍵多い92鍵。低域の拡張により倍音成分が増し、響きがよりふくよかになる。拡張鍵盤を初めて備えたのがこのモデルで、発売当時の最上位機種だった。また現行モデルとの構造上の大きな違いは、スプルース製のケースが響板面積に対して高い比率を占める設計にもある。それが、特有の深い響きに寄与しているという。
公演では東京音大4年在学中の若手・津野絢音がスタインウェイでベートーヴェンのソナタ第7番を、欧州で実績を重ね、古楽器にも通じる橘高昌男がベーゼンドルファーでシューベルトの即興曲集D935とリストの「巡礼の年第1年:スイス」より2曲を弾く。「対決」ではなく、それぞれの魅力に耳を澄ます機会。2つの名器が100年を超えて響き合う。
文:宮本 明
(ぶらあぼ2026年4月号より)
ランチタイムコンサート Vol.139 1909年製ベーゼンドルファーの息吹 III 橘高昌男 津野絢音(以上ピアノ)
2026.5/2(土)12:15 TOPPANホール【完売】
問:TOPPANホールチケットセンター03-5840-2222
https://www.toppanhall.com
