
中江早希 ©Ayane Shindo/隠岐彩夏/中嶋克彦/小池優介
オランダ古楽界の巨匠であり、1983年から2018年までオランダ・バッハ協会の芸術監督を務めたヨス・ファン・フェルトホーフェン。同協会がYouTubeで配信する画期的な演奏動画プロジェクト「All of Bach」で彼の端正なタクトさばきに魅了されたファンも多いだろう。その彼の指揮で歌うべく2022年に日本で誕生したのがヨス・ファン・フェルトホーフェン合唱団だ。集まった約100名の愛好家たちが合唱指揮の山神健志の指導で研鑽を積み、これまでハイドン「天地創造」、メンデルスゾーン「エリアス」、ブラームス「ドイツ・レクイエム」を成功裏に上演してきた。
今回まず注目されるのはその演目だ。モーツァルトが未完で残した「大ミサ曲 ハ短調」のファン・フェルトホーフェンによる再構成だという。熱心な古楽愛好家であったファン・スヴィーテン男爵を通じてモーツァルトがバロック作品に親しんだ史実を踏まえ、ヘンデルの「メサイア」、「エジプトのイスラエル人」、バッハの「ミサ曲 ロ短調」などの一部を組み合わせる。荒唐無稽というなかれ。ファン・フェルトホーフェンはこれまでにもバッハ「ヨハネ受難曲」の失われた初演稿をP. ディルクセンが推論・復元した版を上演するなど、演奏現場での実験を続けてきた。今回の作品(世界初演)は、いわば彼ならではの経験に裏打ちされ研ぎ澄まされたファンタジーの結晶といえる。
管弦楽のプロムジカ・バロック・アカデミーと4名の声楽ソリスト陣には、日本の古楽界を牽引する若手音楽家たちが顔を揃える。これは聴き逃せない公演だ。
文:近松博郎
(ぶらあぼ2026年1月号より)
ヨス・ファン・フェルトホーフェン合唱団 第4回演奏会
2026.1/30(金)19:00 すみだトリフォニーホール
問:ヨスコア事務局03-3367-2451
https://www.joschor.com
