驚異的な技巧やレパートリーの数で常に第一線を走り続けるピアニストの横山幸雄。ショパンやベートーヴェン演奏のイメージが強いが、彼はパリで学び、ラヴェルの直弟子でもあるヴラド・ペルルミュテールの指導も受けるなど、フランスの作品に対する思い入れは非常に強い。そんな横山のラヴェルは一つひとつの音色の美しさやそれらの重なり、そして構築力が際立っている。特に演奏の難しい「夜のガスパール」、構成、技法などに古典的な要素が強い「クープランの墓」といった作品でそれが顕著に聞こえてくる。新しいラヴェル作品集の決定盤ともいうべき完成度の高さだ。
文:長井進之介
(ぶらあぼ2025年12月号より)
【information】
SACD『ラヴェル:ソロ・ピアノ作品全集/横山幸雄』
ラヴェル:古風なメヌエット、亡き王女のためのパヴァーヌ、水の戯れ、ソナチネ、鏡、夜のガスパール、ハイドンの名によるメヌエット、高雅で感傷的なワルツ、ボロディン風に、シャブリエ風に、前奏曲、クープランの墓
横山幸雄(ピアノ)
妙音舎
MYCL-00401(2枚組) ¥4950(税込)

長井進之介 Shinnosuke Nagai
国立音楽大学大学院修士課程器楽専攻(伴奏)修了を経て、同大学院博士後期課程音楽学領域単位取得。在学中、カールスルーエ音楽大学に交換留学。アンサンブルを中心にコンサートやレコーディングを行っており、2007年度〈柴田南雄音楽評論賞〉奨励賞受賞(史上最年少)を機に音楽ライターとして活動を開始。現在、群馬大学共同教育学部音楽教育講座非常勤講師、国立音楽大学大学院伴奏助手、インターネットラジオ「OTTAVA」プレゼンターも務める。
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