名手アンソニー・ロマニウクが3種の鍵盤楽器で魅せるソロ・リサイタル

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 複数の鍵盤楽器を弾きこなすマルチ・キーボーディストと言えば、かつてはロックやフュージョンの専売特許で、リック・ウェイクマンやハービー・ハンコックの姿が思い浮かぶ。しかし近年はクラシックでも古楽演奏の浸透により複数の鍵盤楽器を弾く演奏家が増えている(角野隼斗もそうだ)。

 その中でもアンソニー・ロマニウクは最右翼。チェンバロ、フォルテピアノ、モダン・ピアノからエレクトリック・ピアノまで弾く。ジャズや古楽も通過した「ひとり多様性」音楽家なのだ。のみならずフォルテピアノでバルトークを弾いたり、逆にエレクトリック・ピアノでバッハを弾いたりする。歴史と楽器を固定した関係にとどめず、新たな出会いの驚きを与えてくれるのだ。さらには即興も自在に導入。本リサイタルは彼のセカンド・ソロ・アルバム『無窮動』のタイトルが冠せられており、反復をキーワードに異なる時代の音楽を一堂に出会わせる。3台の鍵盤楽器で時空を駆ける!

文:矢澤孝樹

(ぶらあぼ2025年8月号より)

第561回日経ミューズサロン
アンソニー・ロマニウク(チェンバロ/ピアノ/エレクトリック・ピアノ)ソロ・リサイタル「無窮動」
2025.8/20(水)18:30 日経ホール
問:日経公演事務局03-5227-4227
https://art.nikkei.com


矢澤孝樹 Takaki Yazawa

1969年山梨県塩山市(現・甲州市)生。慶應義塾大学文学部卒。水戸芸術館音楽部門主任学芸員を経て現在ニューロン製菓(株)及び(株)アンデ代表取締役社長。並行して音楽評論活動を行い、『レコード芸術online』『音楽の友』『モーストリークラシック』『ぶらあぼ』『CDジャーナル』にレギュラー執筆。朝日新聞クラシックCD評選者および執筆者。CD及び演奏会解説多数。著書に『マタイ受難曲』(音楽之友社)。ほか共著多数。