オーケストラ・ファン垂涎の魅惑の祭典
芸術の秋、東京には世界各地からメジャー・オーケストラが続々とやってくる。迎えうつ日本のオーケストラ界もすこぶる熱い。音楽ファンにとってこんなに恵まれた都市は、世界を見渡してもそうはない。だが、ぎっしりと詰まったコンサートスケジュールにたじろいでしまう人も少なくないはずだ。そういう人に、まずはこれを聴いておけば間違いないよ、と自信を持ってお勧めできるのがNHK音楽祭だ。今年は「極上のオーケストラ・サウンド―真価を発揮する指揮者たち」というテーマのもと、ベテランから若手まで、多彩な指揮者のリードで世界のトップクラス4団体が名曲を披露する。
口火を切るのはロンドン交響楽団(10/1)。指揮のベルナルト・ハイティンクはコンセルトヘボウ管やシカゴ響といった名だたるオーケストラを率いた巨匠で、バランスよく安定した音色を引き出す。イギリスを代表する楽団らしくお国の作曲家パーセルの「メアリー女王のための葬送音楽」ではじまり、ベートーヴェン「ピアノ協奏曲第4番」(ピアノ:マレイ・ペライア)、ブラームス「交響曲第1番」と続く。
10月8日はNHK交響楽団がパーヴォ・ヤルヴィと共に登場。今年2月のお披露目演奏会では独特の緊張感の漂う快演を聴かせたヤルヴィだが、首席指揮者就任は9月からだから、まさに着任ほやほや。パリ管との来日で深い感銘を残したベルリオーズ「幻想交響曲」の至芸が再び、今度は我らがN響の演奏で聴ける。ジャン・イヴ・ティボーデのエスプリ豊かなラヴェル「ピアノ協奏曲」も面白そう。
11月4日はチェコの看板オーケストラ、チェコ・フィルハーモニー管弦楽団が首席指揮者イルジー・ビエロフラーヴェクと共に、スメタナ「わが祖国」を聴かせてくれる。ビエロフラーヴェクは2012年、約20年ぶりに同団首席に返り咲いた。チェコ・フィル伝統の響きを知り、また骨の髄から同団を愛している指揮者で、新体制発足後3年を経た共演の深まりに期待したい。
11月16日のhr交響楽団(旧フランクフルト放送交響楽団)は、ウィーン・トーンキュンストラー管などを振ってめきめきと評価を上げたコロンビア出身のアンドレス・オロスコ・エストラーダが振るマーラー「巨人」に注目だ。彼は若手指揮者の台頭が著しい中、台風の目となっていくであろう逸材。共演は五嶋龍でチャイコフスキー「ヴァイオリン協奏曲」という組み合わせもフレッシュだ。
毎回、コンサートの前には音楽評論家・奥田佳道の軽妙なトークが楽しめるのに加え、今年は放送開始90周年記念ということもあり、オープニングにはNHKクラシック番組でお馴染みのメンバーが集う特別コンサートも催される(9/30 NHKホール ※入場無料/要事前申込み)。例年にも増して盛りだくさんだ。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年7月号から)
10/1(木)19:00 ロンドン交響楽団
10/8(木)19:00 NHK交響楽団
11/4(水)19:00 チェコ・フィルハーモニー管弦楽団
11/16(月)19:00 hr交響楽団
NHKホール
問:ハローダイヤル03-5777-8600/NHKプロモーション音楽祭係03-3468-7736
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