N響オーチャード定期、2025/2026シーズンは名作映画を彩るクラシックをフィーチャー!

 N響オーチャード定期は、現在「東横シリーズ」として、渋谷のBunkamuraオーチャードホールと横浜みなとみらいホールで開催されている。2025/26シーズンもそれぞれのホールで2回ずつの公演となる。今回のテーマは「魅惑の映画音楽」。映画で使用されたクラシック音楽の名曲がずらりと並ぶ。

 シーズン・オープニングの第134回(11/2)は、広上淳一のタクトのもと、伊福部昭「SF交響ファンタジー 第1番」で始まる。『ゴジラ』『宇宙大戦争』などの自作をメドレー編曲した作品だ。そして『みじかくも美しく燃え』のモーツァルトのピアノ協奏曲第21番。映画で使われた第2楽章の美しさが際立つこの名作で、2021年リーズ国際ピアノコンクール第2位の小林海都が独奏を務める。『愛と哀しみのボレロ』のラヴェル「ボレロ」と『血と砂』のファリャ「三角帽子」では、広上&N響がオーケストラ音楽の醍醐味を味わわせてくれるだろう。

左:広上淳一 ©Masaaki Tomitori/小林海都 ©Tsutomu Yagishita/トゥガン・ソヒエフ ©Marco Borggreve

 第135回(26.1/11)は世界が注目するトゥガン・ソヒエフがオーチャード定期に初登場する。ウィーン・フィルやベルリン・フィルに客演するなど、世界の檜舞台で活躍するマエストロ。近年、N響とも定期的に共演を重ねている。メインのベートーヴェンの交響曲第7番は、『のだめカンタービレ 最終楽章』での第1楽章が記憶に残るが、『英国王のスピーチ』では第2楽章が使われた。現代を代表する名指揮者の一人である、ソヒエフによる第7番がとても楽しみである。そのほか、『時計じかけのオレンジ』のロッシーニ《どろぼうかささぎ》序曲、『プラトーン』のバーバー「弦楽のためのアダージョ」、『地獄の黙示録』のワーグナー「ワルキューレの騎行」、ヨハン・シュトラウスⅡ世「美しく青きドナウ」といった、バラエティに富んだ名曲をソヒエフがどう振り分けるのかも興味津々だ。

 第136回(4/19)は、N響首席指揮者ファビオ・ルイージの指揮で、マーラーの交響曲第5番が取り上げられる。ルイージ&N響のコンビは、今年5月にアムステルダムのコンセルトヘボウで開催された「マーラー・フェスティバル2025」に、ベルリン・フィル、シカゴ響、ロイヤル・コンセルトヘボウ管などとならび出演し、マーラーの交響曲第3番と第4番を演奏して国際的な評価を高めた。そんな彼らが奏でる第5番は聴き逃せない。この作品の第4楽章「アダージェット」は、ヴィスコンティの名画『ベニスに死す』で非常に印象的に用いられ、単独でも演奏されるほど人気が高い。前半には『愛と哀しみの果て』で流れたモーツァルトのクラリネット協奏曲をN響首席奏者の松本健司が吹く。

左:ファビオ・ルイージ ©NHKSO/松本健司/原田慶太楼 ©Claudia Hershner

 そして第137回(6/28)は、アメリカと日本を拠点として国際的に活躍する原田慶太楼がオーチャード定期に再登場し、映画音楽の巨匠ジョン・ウィリアムズの作品を取り上げる。原田は現在、米国サヴァンナ・フィルの音楽&芸術監督、東京交響楽団正指揮者、愛知室内オーケストラ首席客演指揮者を兼務し、7月から米国デイトン・フィルの音楽・芸術監督に就任する。かつてジョン・ウィリアムズのアシスタントを務めた原田にとっては、まさに十八番のレパートリー。『スーパーマン』『E.T.』『ジュラシック・パーク』『シンドラーのリスト』『レイダース/失われたアーク』『ハリー・ポッター』、そして『スターウォーズ』の音楽を、原田慶太楼&N響のゴージャスなサウンドで満喫したい。一回券に先駆け、最大20%割引のシリーズ券も8月3日までの期間限定で販売中!

文:山田治生

(ぶらあぼ2025年7月号より)

N響オーチャード定期 2025/2026 東横シリーズ 渋谷⇔横浜 〈魅惑の映画音楽〉
【第134回】 2025.11/2(日)15:30 Bunkamuraオーチャードホール
【第135回】 2026.1/11(日)15:30 横浜みなとみらいホール
【第136回】 2026.4/19(日)15:30 横浜みなとみらいホール
【第137回】 2026.6/28(日)15:30 Bunkamuraオーチャードホール

シリーズ券 8/3(日)までの期間限定販売
問:Bunkamura 03-3477-3244 
https://www.bunkamura.co.jp
※各公演の発売日の詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。


山田治生 Haruo Yamada

音楽評論家。1964年、京都市生まれ。1987年慶應義塾大学経済学部卒業。雑誌や演奏会のプログラム冊子に寄稿。著書に「トスカニーニ」、小澤征爾の評伝である「音楽の旅人」、「いまどきのクラシック音楽の愉しみ方 」、編著書に「戦後のオペラ」、「バロック・オペラ」、「オペラガイド」、訳書に「レナード・バーンスタイン ザ・ラスト・ロング・インタビュー」などがある。