若手指揮者と老舗楽団による待望の「幻想」。全体的に洗練されたサウンド。そのなかで、内声部を中心とした活発な動きが、大胆な解釈にも繋がっている。揺らめくようなテンポで幻惑させる第3楽章。「断頭台への行進」における各弦楽器の動きの明快さ、雄弁さは驚異的だ。“わっと行きまっせ”と煽りかけたと思うや、極めて丁寧なフレージングで弾かせたりといった肩透かしを含め、とかく指揮者はオーケストラを引っ張り回す。そして、“そんなことぐらい余裕でできますわよ”といわんばかりの本気度のオーケストラ。お互いの才能を活かし合った幸福な記録がここにはある。
文:鈴木淳史
(ぶらあぼ2025年7月号より)
【information】
CD『ベルリオーズ:幻想交響曲、ラヴェル:ラ・ヴァルス/クラウス・マケラ&パリ管』
ベルリオーズ:幻想交響曲/ラヴェル:ラ・ヴァルス
クラウス・マケラ(指揮)
パリ管弦楽団
ユニバーサル ミュージック
UCCD-45035 ¥3300(税込)

鈴木淳史 Atsufumi Suzuki
雑文家/音楽批評。1970年山形県寒河江市生まれ。著書に『クラシック悪魔の辞典』『背徳のクラシック・ガイド』『愛と幻想のクラシック』『占いの力』(以上、洋泉社) 『「電車男」は誰なのか』(中央公論新社)『チラシで楽しむクラシック』(双葉社)『クラシックは斜めに聴け!』(青弓社)ほか。共著に『村上春樹の100曲』(立東舎)などがある。
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