GWはカジュアルでハイグレードなコンサートを満喫
仕事や家事に忙しいパパ・ママにとって、ゴールデン・ウィークは家族揃って過ごせる大切な時間。本誌読者の方々なら、子どものクラシック体験を兼ねて家族一緒に楽しめるようなコンサートを探しておられるのではないだろうか。しかし、子ども向けの企画は数多くあるものの、コアなクラシック・ファンの大人をも唸らせるようなコンサートは、ありそうで意外に少ない。そんな“二兎を追う”欲張りな方のニーズにぴたりと合致するうれしい機会が、5月5日の子供の日に行なわれる「N響★カンタービレコンサート」だ。
このコンサートが開催されるのは2007年と2010年に続いて3回目。コンサートのタイトルからもわかるように、「のだめカンタービレ」でクラシック音楽に興味をもった新たな聴衆に向けて、同作に登場した有名曲の数々を、日本の最高峰のオーケストラで楽しんでもらおうという贅沢な趣向だ(ちなみに、N響首席オーボエ奏者の茂木大輔が、音楽監修的な立場で「のだめ」に大きな役割を担っていたのはご存知のとおり)。すでに原作やドラマ・映画が完結している今回も、そのコンセプトは引き継ぎながら、あらためて「カンタービレ cantabile」の言葉の意味に浸る、沸き立つ生き生きとした「歌」の聴けるコンサートになりそうだ。
予定曲目の前半には、『カレリア』組曲、『トゥオネラの白鳥』『フィンランディア』とシベリウスが並ぶ。どれも人気の高い傑作だが、この3曲を一度に聴く機会は意外に少ないのではないだろうか。そして後半は、「ベト7」ことベートーヴェンの交響曲第7番。ドラマ版「のだめ」の主題曲として使われていまや国民的人気曲だが、それはこの交響曲の躍動する明るいキャラクターが万人に受け入れられるものだったことの証だろう。もし子どもたちが初めて聴くコンサートが、シベリウスと『ベト7』だとしたら、なんて素敵なことか。
タクトをとるのは広上淳一。現役日本人指揮者のなかではN響定期への登場頻度の高い一人だ。生来のむんむんと溢れる圧倒的なエネルギーは、「舞踏の聖化」と呼ばれるベートーヴェンの7番にはジャストフィットだし、あまり記憶にない広上のシベリウスを、N響で聴けるのにも興味津々。名演の予感が漂う。
ご存知のようにNHK交響楽団は1998年から、毎月の3つのプログラムの定期演奏会のうちBプログラムをサントリーホールで開催しているが、それは大変な人気で、定期会員以外だとチケットの入手はなかなか困難な状況。それだけに、日本が誇るサントリーホールの恵まれた音響でN響を聴ける機会はとても貴重だ。しかも、このまま定期演奏会に持っていっても何の違和感もない本格的なオーケストラの人気名曲が揃ったプログラムとくれば、これはもう聴かなきゃ損。曲名を眺めているだけでもワクワクしてくるではないか。過去2回はいずれも完売した人気公演。
今年のゴールデン・ウィークは、ぜひこのコンサートを中心に家族サービスを早めに計画してみてはいかが? (文・宮本明)〜「ぶらあぼ」2月号から
N響★カンタービレコンサート
5/5(日・祝)14:00開演 サントリーホール
【出演】
指揮:広上淳一
管弦楽:NHK交響楽団
【曲目】
シベリウス:組曲「カレリア」、トゥオネラの白鳥、交響詩「フィンランディア」
ベートーヴェン:交響曲第7番 イ長調
[料金] S¥7,800 A¥6,800 B¥5,800(税込)