初来日!ドイツの歌姫サラ・トラウベルが贈るモーツァルトとクリスマス・ソング

左:サラ・トラウベル ©Harald Hoffmann
右:浅野菜生子

 一声に撃たれ、打ち震え、虜になる。すぐれた歌手の声は時に、聴き手にこんな作用をもたらす。たとえばドイツのソプラノ、サラ・トラウベルのように。

 声の透明な響きは高密度で、理想的に広がり、伸びていく。しかも、どの音域でも声質が一定で、超高音までストレスなく自然に達する。その声を浴び続ける心地よさがたまらない。

 17歳にして故郷マンハイムでデビューしたトラウベル。その後、ベルリン芸術大学、ザルツブルクのモーツァルテウム大学、マンハッタン音楽院などで学び、主要な歌劇場や音楽祭でキャリアを築いてきた。なかでもモーツァルトは、欧州でもめずらしいほどの水準だ。気品ある声を器楽的に操る力があり、そのうえ情感も豊かだから、《ドン・ジョヴァンニ》のドンナ・アンナのアリアをはじめ、モーツァルトの楽曲の持ち味がこのうえなく開花する。そんな稀有な歌唱を日本で味わえるとは、なんという幸せだろう。

 浅野菜生子のピアノ伴奏を得て、第一声の衝撃から終演まで、ホンモノに触れた心地よさに全身が包まれる。そんな時間が約束されている。
文:香原斗志
(ぶらあぼ2024年12月号より)

第553回日経ミューズサロン サラ・トラウベル ソプラノ・リサイタル
2024.12/12(木)18:30 日経ホール
問:日経公演事務局03-5227-4227
https://art.nikkei.com