藤岡幸夫は2019年4月東京シティ・フィルの首席客演指揮者に就任以来、同楽団と息の合った名演を積み重ねてきた。
12月のベートーヴェンの交響曲第9番も熱演となることは確実だが、筆者は藤岡の指揮する第九に触れる機会がこれまでなかったため、過去に聴いた彼の指揮の特長からどのような演奏になるのか予測してみた。
特長の1つは熱気。情熱的な指揮は求心力が強く、オーケストラは一つに結束する。2つに力強い推進力。第1、第2楽章は激しい戦いのように進むと思われる。3つにフレージングの美しさ。第3楽章は清らかに歌わせるだろう。4つにバランス感覚。終楽章は激しく盛り上げるだろうが、オーケストラ、ソリスト、合唱の均衡はしっかりと保たれるに違いない。
藤岡と同様に、常に熱く燃え全力な東京シティ・フィルの演奏は定評がある。共演のソリストは、ウィーン・フィル夏のアカデミー《偽の女庭師》題名役出演の森野美咲(ソプラノ)、チョン・ミョンフン、パーヴォ・ヤルヴィ等との第九の共演もある林美智子(メゾソプラノ)、人気・実力ともに日本を代表する歌手・村上敏明(テノール)、ウィーンを拠点に欧州および日本各地で活躍する平野和(バリトン)という堂々たる布陣。東京シティ・フィル・コーア(合唱指揮:藤丸崇浩)は、歌に気持ちが入っており、温かみのある合唱からはチームワークのよさと誠実さが感じられる。
藤岡の指揮のもと出演者全員が一体となる第九は、熱気と音楽的な美しさが両立する充実の名演になることだろう。
文:長谷川京介
(ぶらあぼ2024年10月号より)
藤岡幸夫(指揮) 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
第九特別演奏会2024
2024.12/28(土)15:00 東京文化会館
問:東京シティ・フィル チケットサービス03-5624-4002
https://www.cityphil.jp