ショパンの変奏曲はモーツァルトへの尊敬と愛を感じる作品です
ウィーン・フィルの首席クラリネット奏者ペーター・シュミードルが芸術監督を務め、首席級の奏者30人で組織された“日本限定”の夢の室内オーケストラ「トヨタ・マスター・プレイヤーズ,ウィーン(TMPW)」が、今春も全国で6公演を行う。
東京と盛岡でショパン「モーツァルト『お手をどうぞ』による変奏曲」のソリストを務めるのは、国際的に活躍するピアニストの菊池洋子。
「この曲では、自分がさらけ出されると同時に、“アッラ・モーツァルト(モーツァルト風)”のユーモアも表現されています。ショパンのモーツァルトへの尊敬と愛を感じる作品です」
菊池がライフワークとするモーツァルトと比較するとどうだろうか。
「ショパンの音楽は、情熱と優しさを内に秘め、メランコリックで時に爆発的、そして、美しく詩的でありつつ、常に明確な方向性も持ち、とても緻密。その点は、共通しています」
そのショパンが、モーツァルトの歌劇《ドン・ジョヴァンニ》の有名な二重唱に材を取ったのがこの変奏曲だ。
「主題の後の第4変奏を除く変奏とポロネーズ風の部分は、どれも大変な超絶技巧。リストなどとはまた違った、独特の難しさです。ただソロで弾くより、オーケストラと一緒なら、さらに広がりがあるので、自由に演奏できる箇所は思い切り良く、たっぷり演奏したいですね」
昨春はウィーンを再訪し、「また魅力の虜になっています」と笑う菊池。
「TMPWの音楽監督のシュミードルさんとは、去年ステージでご一緒しました。今回はとても華やかなプログラムですし、ふだんはオペラやバレエも演奏している彼らと共演できることに、期待が膨らみます。それに東京だけではなく、震災から4年が経ち、力強い復興を遂げていらっしゃる岩手の皆様にお目にかかれるのも楽しみですね。機会があればTMPWと、ぜひモーツァルトのピアノ協奏曲で共演したいですね」
5月には「プラハの春音楽祭」で、名手ラデク・バボラーク(ホルン)らのアンサンブルとの共演を控えるなど、多忙なスケジュールが続く菊池。そんな中でも、「モーツァルトの作品を一曲でも多く演奏したい。今は、ソナタ全曲演奏に、もう一度取り組みたいと考えています。それに、ピアノ協奏曲の弾き振りも!」と目標を見失うことは決してない。
そんな菊池にとって、「音楽」とは。そして、「ピアノ」とは一体何だろうか。
「音楽は、いつも私に大きな力と感動を与えてくれる存在です。どんな時も、いつもそばで励ましてくれて、一緒に喜びや悲しみを分かち合い、時には祈りを共にする。一番信頼できる、大きなエネルギーの源です。そして、そんな音楽と私を繋いでくれるピアノは、自己表現するための大切な宝物ですね」
取材・文:寺西 肇
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年4月号から)
トヨタ・マスター・プレイヤーズ,ウィーン ウィーン・プレミアム・コンサート
共演:菊池洋子(ピアノ) 他
4/6(月)19:00 サントリーホール、4/11(土)13:00 岩手県民会館
他の全国公演の詳細は下記ウェブサイトでご確認ください。
問 トヨタ・マスター・プレイヤーズ事務局03-5210-7555
http://www.toyota.co.jp/tomas15