【CD】作曲家との思い出 ―山根弥生子 同時代の日本人作品を弾く

 山根は音楽評論家であった父・銀二を通じ、また1950年代のパリ留学時代にも多くの作曲家と知り合い、彼らの作品を愛奏してきた。本アルバムはそれらの新録音と、60〜70年代に旧東独で演奏された3曲の協奏曲のライブ録音からなる。フランス風の和声に日本風味をほんのりと交えた宅孝二の明るく清々しい「ソナチネ」に始まり、各曲に表れた作曲家たちの創意、特に日本的なものをピアノ小品に落とし込むアイディアが楽しい。山根はブックレットで各人の人柄を鮮やかに活写しているが、同時代を生きた仲間だからこその共感や喜びが滲み出た演奏は、時間を超えた会話のようですらある。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2024年6月号より)

【information】
CD『作曲家との思い出 ―山根弥生子 同時代の日本人作品を弾く』

宅孝二:ソナチネ/諸井誠:以呂波譬喩八題/清瀬保二:四つの前奏曲より抜粋/甲斐直彦:首里城での舞踏会/松平頼則:ピアノと管弦楽のための主題と変奏/牧野由多可:ピアノとオーケストラのための協奏曲第2番/宍戸睦郎:ピアノとオーケストラのための協奏曲第2番 他

山根弥生子(ピアノ)

収録:1966年10月、ベルリン(ライブ) 他
コジマ録音
ALCD-9258,9259(2枚組) ¥4070(税込)